米カンザス州の教育委員会は8日、公立学校での科学教育に「インテリジェント・デザイン(ID)」と呼ばれる創造論の授業を許可することを決定した。IDは、地球や人類をはじめ全宇宙の誕生には「大いなる力」の介入があったという考え方。数十億年とされる地球年齢やダーウィンの「進化論」を必ずしも否定しないが、「神が人を創造した」という考え方にも同調している。支持層のほぼ全員は有神論者やキリスト教徒。
米クリスチャンポスト紙が9日、伝えた。
神による天地創造を否定する材料として用いられる進化論への批判も学校で教えるべきだとする運動が、国内各地で保守派キリスト教徒を中心に起こっていることを受けての措置とみられている。だが、一方で、義務教育の現場での政教分離の原則に抵触しかねないとの批判も増加すると予想されている。
AP通信などによると、新指導基準は「高校生は進化論を理解しなくてはならない」とする一方、直接証明する証拠がないことや、化石の記録と矛盾することなど進化論に疑問点も多いことを教える。基準の内容は今後、各校で科学の試験などに反映されるという。
進化論の批判的検証はミネソタ、オハイオ、ニューメキシコの各州の学校教育でも導入済み。
米国ではこれまで、公立学校で「創造論」を教えることの是非が問われてきたが、1987年に最高裁が「聖書の創世記を授業で教えることは、政教分離に反する」と判断して以来、公立学校での「創世記」授業は禁止されている。
米合同メソジスト教会員として知られるブッシュ米大統領も今年8月、「進化論」と同時に「ID」を学校現場で教えるべきだと発言し、福音派教会を中心に支持されたが、自由主義教会や無神論者などからは非難された。
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