米国では、同性愛問題に揺れる米国聖公会と合同メソジスト教会とは対照的に、同じ主流派教会、合衆国長老教会(PCUSA、信徒数220万)は比較的平穏を保ってきた。ところが、24日付AP通信は、ここにきてPCUSAの状況が変化していると報じた。
2001年以来、長老教会は「平和、一致、純粋」に主眼を置く特別委員会を設置し、同性愛問題など、教会内で意見の不一致が深刻な課題を克服しようと努力してきた。現在、特別委の作業が終盤に差し掛かり、今年7、8月の2会議で最終報告書をまとめる方針だ。
AP通信によると、一部の議員は、この最終報告書を待っていない。2週間前、85の福音主義教会はミネソタ州エディナ市で会合を開催し、各教会からの代表が集合した。代表らは、基本教理と倫理的要請を盛り込んだ要綱を採択した。この要綱は?聖書の無謬性?ただイエス・キリストによる救済?全人類伝道の必要?同性愛と人工中絶の否定――を骨子にしている。
この集会では、主催教会による「ニュー・ワインスキンズ(新しい皮袋)・イニシアチブ」の発足が宣言された。この集まりは、数十年続く教会員の減少を食い止めるため、組織の抜本的改革や伝道中心の体制を提案している。
エディナ集会の運営委員長、トム・エドワーズ牧師(カンザス州ウィチタ)は「長老教会が権威主義の傾向にあることを懸念する。これからは、地方の教会に仕えると同時に、地方教会が組織官僚の下に従属する構造を改める必要がある」と話した。
同イニシアチブは、2006年の全国総会で、保守的信仰と組織改革案が承認されることを期待している。この総会では、特別委の最終報告以外に、リベラル派から提出された、同性愛者の聖職・事務職就任を禁じる教会憲法の改定案が主な焦点となる。
同イニシアチブの賛同者は教会の一致を目指しているが、同時に教会分裂の兆しも確認している。
エディナ集会で議長を務めたデビッド・ヘンダーソン牧師(インディアナ州)は、PCUSAの将来の行方に3つの可能性があるとしている。
1. ニュー・ワインスキンズが提案するような、全面的組織改革
2. ニュー・ワインスキンズがPCUSAから脱退
3. PCUSA内に「ニュー・ワインスキンズ」「リベラル派」といった「群れ」を結成
ヘンダーソン師はエディナ集会の席上で、参加者に対し、このイニシアチブが教会の分裂を主張するのではないと述べた上で、「分裂は既に起こった」と、PCUSA内でリベラル派と保守派との間に衝突があったことを明かした。
エディナ集会で書記を務めたジェリー・バン・マーター牧師は、PCUSAに提出した報告記事の中で、「集会の開催自体が、参加教会が(PCUSAからの)脱退を検討していることの現れでは」と指摘している。「参加者の中には、今すぐ脱退できると話す人もいる。他の参加者は、大規模な改革が起こってほしいと願う一方で、実際に起こる可能性に対しては悲観的だ」(マーター牧師)
エディナ集会の参加者の中でも特に保守的なパーカー・ウィリアムソン牧師(ノースカロライナ州)は、個人的な見解と断った上で、2つの要因が分裂を招くと述べた。一つは、ニュー・ワインスキンズのような、保守派教会の受け皿となる組織が存在すること、第2に、同性愛問題をめぐって、リベラル派が06年総会で勝利することだ。
リベラル派は、同性愛など性行為に関する教憲の廃止を求めてきたが、教会側が拒否を続けるため、不満を募らせている。一方、保守派も、リベラル派の激高、教憲の軽視に対し、批判を続けている。
PCUSAでは、2001年、同性愛カップル祝福の禁止を求めて保守派が教憲修正案を提出したが、同案は複数の地方中会で否決された。また、ある牧会者が、総会開催中、「救済はキリスト教以外の宗教を通しても可能」と議場で発言し、中会代表らが「正しい議論である」との認識を示したことがある。
AP通信によると、PCUSAが変革期にあることは、「イエス・キリストだけが主であり、救いの道」「正しい性行為が可能なのは男女間の結婚のみ」と認識する教会が全体の18%程度にとどまっていることから明白だ。こうした「変化」を懸念した牧師たちが声を上げ、ニュー・ワインスキンズ・イニシアチブの発足につながった。