世界教会協議会(WCC)のサムエル・コビア総幹事とローマ・カトリック教会の教皇ベネディクト16世が16日(日本時間同)、バチカンで会談した。他教会との関係向上に取り組む教皇が、カトリック教会と正教会の間に生じた亀裂の回復に乗り出した。AP通信英語版が同日報じた。
コビア総幹事はローマに4日間滞在。教皇直近のキリスト教一致推進責任者、ウォルター・カスパー枢機卿とも会談した。
教皇は正教会への歩み寄りを在任中の最低公約として言明している。プロテスタント教会と正教会は約300の教会と共にWCCに名を連ねている。一方、カトリック教会は、WCCに加盟していないが、超教派集会などに交流レベルで参加している。
AP通信によると、コビア氏は会談前、同通信によるインタビューに応じ、「カトリック教会が他のキリスト教系教会を『宗教的共同体』と定義し、教会として認めていないことに、多数のWCC加盟団体が不満を示している」と明かした。
コビア氏の発言は、2000年9月5日にバチカンの教理省(長官・ジョセフ・ラッツィンガー枢機卿=当時=)から発行された宣言「ドミヌス・イエスス」に言及したもの。宣言でカトリック教会は、英国国教会などプロテスタント諸教会が正確には教会と異なり、救いを妨げるさまざまな欠陥があるとしている。
この宣言に対し、WCCは同年同、「WCCなどによるエキュメニズム運動の中で、諸教会は相互関係に関する微妙な対話を続けてきた。もしこれらの努力が、議論を阻害するような言語によって妨げられ、傷つけられるようなことがあれば、その損失は計り知れない」と批判した。
今回の会談で、コビア氏は、カトリック側に対して宣言の撤回を求めるのではなく、キリスト者として、過去の発言を超える前進を両者からの歩み寄りによって実現させるべきだと語った。
コビア氏は、正教会のWCC加盟について触れ、正教会の教理に他教会を受け入れる余地があるか検討するようWCC側から正教会側に申し入れた、と明かした。また、コビア氏は「聖餐や神学にかかわる根本的な問いに対する応答は、教会間の受洗や救済論容認の可否にまで波及する。信仰は、キリストにある兄弟姉妹と共に生きるためにこそ用いられるべきではないか」と述べた。
カトリック教会と正教会の間にある葛藤の主な理由として、正教会の一部が、カトリック教会は「正教会の領地を奪おうとしている」と主張していることが挙げられている。故ヨハネ・パウロ2世がロシア訪問を実現できなかったことも、カトリック教会の動きに過敏になっている正教会が背景にある。ロシアの正教会人口は世界最多。