米国務省による宗教の自由に関する世界各国の現状をまとめた報告書の原案となる、米・国際宗教自由委員会(USCIRF)の報告書が現地時間12日、発表された。宗教弾圧を行っている「特に懸念のある国」のリストに、パキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの3カ国を新たに加えた。同委は同日、同書を米国務省に提出した。
同委がこれまで宗教弾圧を行っている「特に懸念のある国」として発表した国は、国務省による’04年度報告書で挙げられた北朝鮮、中国、ミャンマー、イラン、スーダン、サウジアラビア、ベトナム、エリトリアに加え11カ国となった。
同委の報告書は「これらの国では、政府が不当な主張で計画的に宗教の自由を侵害する活動に参加または加担している」としている。パキスタンとトルクメニスタンは昨年度報告されなかったが、一昨年度までは毎年報告されていた。
<パキスタン>
パキスタン: 報告書によれば、パキスタンではイスラム教スンニ派の武装勢力による暴行がキリスト教徒、ヒンズー教徒、イスラム教シーア派教徒、アフマディー教徒に対して日常的に行われており、多数の犠牲者が出ているにもかかわらず政府は黙認状態という。武装勢力は「神に対する冒涜の容疑」との一方的な主張で他教徒を拘束、監禁することが多く、殺害されたケースも数件報告されている。パキスタン政府による宗教制限について、世界福音同盟(WEA)信教の自由委は最新の報告書で「ムスリム教徒4人の前でムハンマドに対する信仰が確認されなかった場合、不敬罪で投獄される」と述べている。1986年以降、不敬罪で逮捕された人々はキリスト教徒を含み4000人にのぼるという。
<トルクメニスタン>
トルクメニスタン: サパルムラト・ニヤゾフ大統領の独裁が20年続いている旧ソ連・中央アジアの「永世中立国」。大統領は1年12カ月の「月」の名称を自身や母親らの名前に変更するなど、独裁体制と個人崇拝が日増しに強化される一方、議会や政府も依然として共産勢力を占めるなど、保守的な体制が根強く残っている。日本外務省によると、旧ソ連共産党幹部だったニヤゾフ大統領は、旧ソ連崩壊前の90年10月に初の直接選挙で98.8%の得票率で大統領に選出された。以降、再選、任期延長を繰り返し、99年12月には憲法を改正して終身の国家元首となった。大統領の独裁の下、あらゆる宗教・言論活動は不可能とされている。
<ウズベキスタン>
ウズベキスタン: 宗教活動を制限する法令が制定されて以降、イスラム教スンニ派社会の中で、他宗教団体の活動が著しく制限されている。宗教組織には当局への登録が義務付けられている。警察による教会の家宅捜索も抜き打ちで日常的に行われ、その場で登録証が提示されない場合、閉鎖を要求される。またイスラム教、ユダヤ教、ロシア正教会と一部のプロテスタント系団体など活動を許可されている組織のみ登録を申請できる。政府は宗教活動に政府指定のプログラムを導入することを義務付けている。プログラム未実施や反政府活動にあたるとみなされる行為が発見され逮捕されるケースが相次ぎ、近年だけで逮捕者は数千人規模という。