自由主義的な教皇を期待した人々は19日新教皇ベネディクト16世の誕生に落胆したはずだ。
19日夜(現地時間)バチカンでローマ教皇選出会議(コンクラーベ)で第265代教皇に選出されたヨゼフ・ラツィンガー枢機卿(78)は、ドイツ人で保守派枢機卿の代表的人物。法王庁・信仰教理聖省の首長としてカトリックの伝統的価値観を守り、ほぼすべてのカトリック関連の論争にも積極的に発言してきた。
堕胎、避妊、人工受精、同性愛などの性倫理、女性の司祭叙品、宗教的多元主義を厳しく批判し反対立場をとる。
カトリック系生命倫理保護団体などはラッツィンガー枢機卿(当時)が示してきた倫理観と献身的な姿勢に対して感謝の意を表している。米ヒューマンライフ・インターナショナルのトマス・アイテノー代表は「新教皇は、教会が生命の神聖さを教え続けるための大きな助けとなる」と評価した。同団体は尊厳死問題で注目された故テリ・シャイボさん(米フロリダ)の存命に終始尽力した経緯がある。
選出会議の開会ミサ(18日)で司会進行したラッツィンガー枢機卿は、絶対的真理は存在しないと主張するポストモダニズムについて「人間の自尊と欲から生まれた思想に過ぎない」と批判した。
ラッツィンガー枢機卿は1991年の報告書で、堕胎を合法化した国家について「人間が自己の権利を主張し続けた結果、人間の生命の基本的な権利を侵害するまでになった。最も弱い存在の権利が奪われることを許容して生きる権利の侵害に加担した国家は、自国が継続的に主張する民主主義思想との自己矛盾に陥っている」と批判した。
ラッツィンガー枢機卿は86年同性愛について「根本的な不道徳」と発言している。最近では、同性愛カップルに結婚と同等の「市民的結合」を許可する動きに対し「罪の承認および合法化と、罪に対する寛容とは別問題であることを説明する必要がある」と主張する反対声明を発表した。
故ヨハネ・パウロ2世の死去後、より自由主義的な教皇を期待していた同性愛擁護団体は、ウェブサイトなどでラッツィンガー枢機卿を「反同性愛者」「同性愛恐怖症」などと呼んでいる。