民族間の緊張が高まる地域で、クリスチャンによる人種の壁を越えた祈祷会が福音の真価を証明する。集まったイラク人(写真)には、アラブ系、クルド系、ペルシャ系、アッシリア系、カルデア系などがいた。(写真:バプテスト・プレス)
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米・南部バプテスト教会所属でイラク在住の宣教師は17日、暴力と迫害のさ中、イラクのキリスト教会が逆境をものともせず活気づいている、と同日発表の報告書の中で報告した。
イラク初の国民議会選が近づくにつれて一層激しさを増す反対組織による武力抵抗にもかかわらず、福音は継続的に宣(の)べ伝えられ、集まった多くの新来者と一緒に国内各地で祈祷会や集会が盛んに行われているという。
同宣教師は同教会の機関誌「バプテスト・プレス」に対し、「米国の外交政策と米軍によって、アブラハム、イサク、ヤコブの地に福音が広まる機会が訪れたのかもしれない」と話し、「神はこの地にも臨む」と強調した。
報告書によると、伝道の成果はイラク各地から報告されている。「宗教には嫌気が差した」と話すイラク人でも、実際には自分と神との間に誠実な関係を求めており、イエスの中にそれを見出すと分析している。宣教師は「バビロン、ニネベ、ウルといった聖書に記されている歴史的都市は既に瓦礫の山となってしまった。だが今は、この地に住むクリスチャンたちが『みことば』となり、彼ら自身を伝えている。彼ら自身が歴史の遺産であり、今も生き続ける歴史そのものなのです」と話した。
「アブラハムは、この民族の“るつぼ”で誕生し、神との関係を築き、国民とキリストの系図の祖となった。わたしたちも、その継承者」と宣教師は話す。
イラクの人口は2千420万人。クリスチャンはこの3%(80万人)といわれている。1987年の国勢調査では約140万人とされ、おもにアッシリア、カルデア系カソリック(旧ネストリウス派)、アルメニア、シリアの各教会に所属していた。だが、80年代後半のフセイン政権によるクルド地区制圧作戦の余波をうけて、イラク北部にあった100以上のクリスチャン住民を主体とする村は教会堂とともに破壊され、クリスチャンはバグダッドに強制移住させられた。以降、クリスチャンの国外脱出が始まり、そこにフセイン政権崩壊後の治安の悪化、イスラム原理主義的傾向の強まりが追い打ちをかけ、国内のクリスチャンの数は激減した。