米大統領選の投票が2日朝(日本時間同日夜)から始まった。即日開票され、当選率は三日早朝(同三日夜)にも判明する見通し。今大統領選は、対テロ政策やイラク問題のほか、同性愛カップルの結婚の権利や妊娠中絶などでも国論が二分される状況にあり、有権者は多角的な視点による総合的な判断力を求められている。勝敗の行方は国際情勢だけでなく、同性愛問題や中絶問題に揺れるキリスト教界にも大きく影響する模様で、世界中の教会が注目している。
共和党のブッシュ大統領と民主党のケリー上院議員は直前まで大接戦を演じている。両候補は、米CNNと米各紙が1日に発表した世論調査では支持率49%で並ぶ。ほかの各種調査でも僅差となっており、当日の緊張感を高めた。
ブッシュ政権の政策はキリスト教の伝統的価値観を規範しており、同性愛や妊娠中絶では反対の立場を明らかにしている。ケリーはブッシュ大統領同様、同性婚には反対の立場を示しているが、選択は個人に任せるべきで法律で規制すべきではない、と主張している。同性愛をめぐっては、州レベルでは同性婚を認めるところが出てくるなど、同性愛者の権利をめぐる動きに変化が起きた。大統領選投票日では同日、全米11州が同性婚の是非を問う住民投票を行うなど、大統領選の大きな争点として認識されていることがわかる。
だが、活発な活動を展開する団体やその主張が米国民の大多数を占めるわけではない。カリフォルニアやニューヨークなどリベラル色の強い州では同性愛や中絶の権利を擁護する考え方が支配的だが、保守派の教会とクリスチャン、米中西部などでは反対意見が大部分を占める。大都会を中心に米国内の価値観の分化が進んでいることを浮き彫りにしており、キリスト教界では投票結果だけでなく、今後の福音伝道についても大きな課題を投げかける大統領選となっている。
福音主義の伝道者と教会は10月下旬から投票前日にかけて、保守派クリスチャンに対し、大統領選に投票することで神への義務を果たし、投票日に神の御心が行われるように祈ることを呼び掛けている。米国だけでなく世界中で強い発言力を持つ伝道家、ドブソンは、キリスト教の価値観に基づいて米国の伝統的な家族・家庭に関する諸問題に取り組む非営利団体、フォーカス・オン・ザ・ファミリーの代表。大統領選は「非常に多くの意味を含んでいる」として1日、自身が出演する国内向けラジオ伝道番組で「あなたがたが義と悪の存在を知っており、まことの真実に対する信仰があるのなら、すべては明日(投票日)にかかっている」と強調し、クリスチャンに投票に出かけるよう訴えた。