ゴスペルアーティストの森祐理さんが3月3日から12日まで日本国際飢餓対策機構(JFHI)の招きにより、エチオピア視察旅行を行った。同地域教会での礼拝出席賛美、農村自立開発プロジェクト視察、HIV−AIDSプロジェクト視察、学校訪問などを行った。
森さんは、サシガ地域でメカネイェスス教団の礼拝に出席し、英語で証を交えながら「Amazing Grace」など3、4曲を賛美した。全くの異文化で同じ主を賛美する感動に胸が熱くなったという。また、サンガ地区の3つの学校訪問し、子供たちへ歌のプレゼントを贈った森さん。一般的に薄暗い教室で多くの子供たちが学んでいるという。
サシガ地域では、農村自立開発プロジェクトを視察した森さん。エチオピアは極度の水不足である。飲み水だけではなくトイレを使って流すおけの水や手を洗う水さえない。そんな中、飲み水を確保するための井戸が23万円で建設できるということを聞いた森さんも献金することを申し込んだという。しかし、住民が井戸の大切さを知り、守っていこうとする意識改革を行わなければ、問題解決には至らない。そのような意識改革の一環として「シードプロジェクト」がスタートした。他団体から援助を受けるのではなく、住民たちが自分たちの力を出し合って孤児や障害の子供たちを支援していこうとする試みだ。
また、ジジカはエイズの感染率が19%と言われており、5人に1人がエイズに感染している。それに伴い、エチオピアには120万人ものエイズ孤児がいる。10年後には250万人にのぼるといわれている。ジジカにはエイズ検査を受け入れる施設はほとんどなく親がエイズで死亡したかどうかさえ分からない子どもがいるというのが現状だ。エイズで親を失った子どもたちは、エイズという言葉を出すと社会的にも難しい立場に置かれるということを考慮しOVC(孤児で弱い立場にいる子供)と呼ばれている。
荒涼たる大地とそこに住む人々のたくましさを目の当たりにし、森さんの中に一つの疑問が生じたという。「豊かさとは、貧しさとは何だろう」
「神様が私たちに願っておられること、それはただ、エチオピアの大地と大空のように大きな主を仰ぎ、委ねて生きることではないだろうか」。そのように話す森さんは、豊かな先進国で垣間見ることのできなかった真の豊かさへの体験の感謝と賛美を捧げた。
しかし、そんな森さんの中にも、この旅への誘いを受けた時には行くことへの迷いがあったという。「体調を崩すのが当前な世界を想像すると決心がつかないのが正直な気持ちだった」。しかし、「強くあれ。雄々しくあれ。恐れてはならない。おののいてはならない。あなたの神、主があなたのいく所どこにでも、あなたと共にあるからだ」(ヨシュア記1章9節 新改訳)という御言葉で、旅への決心がついたという。また、「多くの祈りと支えにより、充実した旅ができたことに感謝している」と語った。
最後に森さんは「写真を見てもあの匂い、乾いた空気、貧しすぎる状況は伝えきれない。でも、私の中に息づいている感動は事実なのだから、歌を通し、言葉を通して伝えていきたい」と語った。