戦前から戦後にかけて、キリスト教の精神に基づいた活発な社会運動を展開した賀川豊彦(1888-1960)を現代に伝えようと、賀川豊彦記念・松沢資料館(東京都世田谷区)が5日、「豊彦と現代」というテーマで講演会を開催した。国際基督教大名誉教授の武田清子さんが講演した。会場には幅広い年齢層の人々約60人が参加した。会場は同資料館。
加山久夫同館長と斎藤宏同館理事長の挨拶のあと、武田さんが講演した。武田さんは、賀川豊彦の社会運動と、その中に賀川が込めた理念を、現代の問題と照らし合わせ、過去の人物としてではなく、現代もなお社会に重要な影響を与えるメッセンジャーとしての賀川を紹介した。
参加者は終始講演者の話に熱心に耳を傾け、講演後の質疑応答の時間には講演者との活発な意見交換がなされた。
本紙の取材に対し、主催スタッフは「戦後、賀川豊彦の名前は急速に風化してしまった。しかし、世の中が混迷する今、もう一度賀川が語る普遍的なメッセージに多くの人が耳を傾けてほしい」と話した。
同資料館は今年9月から毎月第3金曜日に賀川豊彦著「死線を越えて」の読書会を開いている。2009年には賀川豊彦の献身100周年記念事業として、同書を原作とした映画「死線を越えて 賀川豊彦物語」(1988)のリメイク版上映や、ノーベル経済学賞受賞者で米ハーバード大のアマルティア・セン教授を招いての記念イベントを企画している。