原爆が投下された広島を舞台に、被爆した少年ゲンがたくましく生き抜く姿を通して、戦争の悲惨さや命の尊厳を描いた漫画「はだしのゲン」が、8月から日米で出版される。 金沢市の主婦らのグループが約4年がかりで英訳した。
翻訳したのは、金沢市の市民グループ「プロジェクト・ゲン」(浅妻南海江(なみえ)代表)。浅妻さんは「世界中の人が読み、核兵器による(広島や長崎の)人々の苦しみを共有してほしい」と各誌のインタビューで語った。
「はだしのゲン」は、6歳の時に広島で被爆した漫画家・中沢啓治さん(65)の自伝的作品。 広島の原爆で肉親を失ったゲンが、貧困や差別を乗り越え、成長する姿を描く。1973年から青少年雑誌で80年代まで連載されていたが、戦争の悲惨さだけでなく、主人公らの純粋さやたくましさが共感を呼び、単行本化され、600万部を超すロングセラーとなっている。
浅妻さんは2001年にロシア語版を自費出版した。その際に、米国では別の団体の訳で全10巻のうち4巻が出版されたことがあるが、荒廃した戦後の広島でゲンが成長する第5巻以降が未刊となっていた。
浅妻さんは「海外でゲンを自国語に翻訳しようと活動している人がいる。翻訳料が入ったら、そうした人たちを支援したい」と話している。 問い合わせは浅妻代表(076・242・6559)へ。