尹東柱は1917年12月、中国東北地方(旧満州の間島)で生まれた。ソウルの延禧専門学校(現延世大)に学んだ後、42年渡日、立教大、同志社大に在学。同志社大在学中、母国語による詩作が治安維持法違反(独立運動)に当たるとして、翌年7月逮捕され、45年2月、福岡刑務所で獄死した(享年28歳)。当時、福岡刑務所は九州大医学部の生体実験と深い関係があったと見られ、尹東柱も「殺された」とする説が有力視されている。
献花式は、同志社校友会コリアクラブの主催で、1996年から毎年、開いている。鮮烈な民族愛とキリスト教信仰と心優しき童心とが溶け合った尹東柱の詩は彼の死後に発表され、同胞ばかりでなく、民族や国境を越えて人びとの心をとらえ続けてやまない。
参加者は尹東柱の詩碑前で、聖書に耳を傾けた。続いて、高校生や大学生7人が、代表作3つを韓国語と日本語で読み上げた。
『十字架』
追って来た陽の光なのに/いま 教会堂の天辺/十字架に掛かりました。//尖塔があんなにも高いのに/どのようにして登ってゆけるでしょうか。//鐘の音も聞こえて来ないのに/口笛でも吹きながらさまよう内に、//苦しんだ男、/幸福なイエス・キリストへの/ように/十字架が許されるならば//こうべを垂れて/花のように咲き出す血を/暗くなりゆく空の下に/静かに流しましょう。>(尹東柱全詩集「空と風と星と詩」正音社)