【CJC=東京】前教皇ヨハネ・パウロ2世「列福」は、2005年に死去してからわずか6年余りで福者に列せられた。「列福」までには死後数十年かかるのが通例。列福に関する審議自体、少なくとも死後5年後に始まるのが慣習とされていた。
今回、前教皇死去2カ月後の05年5月末にベネディクト16世は審議開始を決めた。前例としては、カルカッタの聖母と言われ、ノーベル平和賞も受賞したマザー・テレサ(1997年死去)がいる。
審議に当たるバチカン(ローマ教皇庁)列聖省は、世界から前教皇にまつわる「奇跡」の候補217件を集め、フランスのシモン・ピエール修道女(50)に起きた事例を選んだ。同修道女は長く前教皇と同じパーキンソン病を患ったが、本人と同僚たちが死んだ直後の前教皇に向かい治癒を祈ったところ、突然完治したという。前教皇がもたらしたかどうかは証明不能だが、奇跡と認められた。
前教皇は在位期間が約四半世紀と長く、東西冷戦終結前後に平和と宗教間対話を強く訴えたことで知られる。訪問先も104カ所に及ぶ。81年には広島を訪れ「戦争は人間の仕業だ」とする「平和アピール」を発表している。またイラク戦争に反対するなど積極的にバチカン外交を展開した。
カリスマ性に富む人柄に、信者が圧倒的支持したことも評価されたと見られる。