25年前にロシアのチェルノブイリで生じた原発事故では、人的被害・環境被害が数世紀にわたって続く深刻な惨事となった。26日はチェルノブイリ事故が生じてちょうど25年目となる。
世界教会協議会(WCC)の発表によると、5月にジャマイカキングストンで開催される国際エキュメニカル平和会議(IEPC)では、チェルノブイリ原発事故および東日本大震災で生じた福島原発事故について大規模な会議なされる予定であるという。
会議のテーマは「公正な平和」で「地球との平和-持続的生命活動のために」などのトピックが掲げられている。IEPCに先んじてドイツの神学者ユルゲン・モルトマン氏は、キリスト者らに神からの賜物である創造物への配慮をするように呼びかけており、3月のエキュメニカルレビューにおいて「私の夢はある日、世界中の諸宗教が新鮮な水のように流れ出て、永遠のいのちの水を時の流れの中にもたらすことだ」と書き記していた。
原発事故は河川・海水や大気に破壊的な被害をもたらす。チェルノブイリ原発事故では、スウェーデンの国土と同程度の地域に300年間にわたって環境被害をもたらすことになった。世界100カ国以上に会員が存在するWCCでは、チェルノブイリ原発事故、東日本大震災による福島原発事故で直接に被害に遭った会員教会も存在している。
WCC総幹事トゥヴェイト博士は「数万人の緊急避難者が生じ、原発事故処理のための危険な対策を余儀なくされ、放射能の被害が拡大し、また生存者が故郷に二度と帰ることができなくなるかもしれないという福島原発事故で生じている被害状況は、25年前に生じたチェルノブイリ原発事故を私たちに再度思い出させます。ウクライナ、ベラルーシおよびロシアではまだチェルノブイリ原発事故の被害に苦しむ方々がおられます。その方々と同様に日本で被害に遭われた方にも深い同情の意を示します。緊急支援を諸教会が団結して行っています。原発被害の持続期間はあまりに長く、また日本のような先進国においてはこのような長期にわたって被害が残る状況が生じた今、原発問題について深刻に再考する必要があるでしょう。人々の安全な暮らしと環境を守るために私たちが社会と教会に対して異なる対策と祈りをしていかなければなりません」と述べた。
来月ジャマイカで開催されるIEPCでは世界各国から1000人もの参加者が集い、原発問題に焦点を置いて議論がなされる予定である。平和のための主たる脅威は何であるか-環境問題・経済・政治問題、軍事問題など様々な要素が挙げられる。福島原発事故と津波・地震による被害のようないくつもの事象が組み合わさった災害に対し、私たちが一市民・消費者としてどのような役割を果たしていくべきかが改めて問われている。
WCCはこれまで、神様による創造物と公正と平和の概念を統合させること、共同体と経済の持続可能な発展を最優先させることに関してエキュメニカルな取り組みを行ってきている。来月のIEPCでは、諸教会が地域的に、グローバルに平和についての理解を深め、また平和への広範囲なネットワークによる協調した取り組みについても理解を深めることが目標となっている。
今日取り組むべき諸課題は、これまでも課題とされてきたものばかりである。東日本海岸沿いの地域では、これまでも津波対策が十分になされてきたが、現代の日本において、ここまで高い津波による対策は無視されてきた。福島原発も津波対策はなされていたものの、東日本大震災による大津波は想定外のものとなり、重大な被害を免れなかった。
WCC気候変動プログラムエグゼクティブのギラーモ・カーバー氏は、「東日本大震災で生じた原発事故の状況について私たちはよく知ることができています。事故の結末から次世代の人々を守るための十分な対策なしに短期的な対策ばかりがなされています。日本のような様々な規制が可能な先進国であっても、人々の活動によって彼ら自身そして他者を危うい状態にさせ得ます。環境に無配慮な開発や高レベルの消費活動・生活スタイルは持続的な生活を成り立たせるものではありません。震災を通して大きな構造的転換が必要とされているといえるでしょう」と述べている。
「生物の大量絶滅」や「大量破壊兵器」についても議題として挙げられている。双方ともに「神の創造物に由来するエネルギーの誤用」に基づく問題であり、深刻化している問題である。原子力発電は危険や軍事的に敏感な技術や燃料の問題を含んでおり、平和と軍縮問題に密接に関連している問題といえる。今後世界でさらなる原発の増設が続けば、その分長期的な原発事故の脅威や環境被害・人類の生活への被害の懸念が高まることになる。
IEPCではチェルノブイリと福島原発事故の関連を取り上げることで、環境問題・原子力問題を越えた領域まで踏み込もうとしている。会議でのもう一つの主題は「市場での平和-すべての人が威厳ある生活を送ることができるために」が含まれる。国連の報告書では、チェルノブイリ原発事故の影響はソビエト連邦が崩壊するひとつの役割を果たしたことが記されている。チェルノブイリ原発事故の影響により、事故発生から20年が経過しても10万人から20万人の人々が孤立化や後遺症・貧困に苦しんでいる。さらに数百万人もの人々がチェルノブイリ原発で被害を受けたと訴えているが、被害に関する正確な情報は入手できないままとなっている。原発事故による正確な被害総額、健康被害への必要な対策、環境汚染処理・経済の再発展のための取り組みについては、具体的には把握できていない。
日本キリスト教協議会(NCC)も、福島原発被害について声明文を発表し、日本政府に対し原発・関連施設の全廃や事故処理に関わる労働者の人権擁護、正確な情報開示などを要望している。神の創造された創造物を人間の手で破壊することのないためにも、キリスト者が聖書的視点から災害後の社会経済発展の在り方について政府に働きかけ、地球との平和を保ちつつ発展できる日本へと新たな発展をさせていく姿勢が今問われているといえる。
福島原発事故・津波・地震による被害により巨額の国債、経済被害、原子力発電に過剰に依存した生活スタイルへの再考が迫られている。チェルノブイリ原発から25年が経過した今、世界は今一度人類と地球との平和を成り立たせるため原発問題を再考し、人類の生活スタイルの転換をも再考する場面に直面している。