米フロリダ州牧師によるイスラム教の聖典コーラン焼却事件に対する抗議運動がアフガニスタンで生じ、国際連合職員含む少なくとも22人がこれまでに殺害されたことが確認された。3日にはアフガニスタン国内で生じた新たな抗議運動により2人が殺害され、数十人が負傷した。
米キリスト教過激派牧師らによるコーラン焼却事件は、当初アフガニスタン内であまり認知されていなかったが、アフガニスタンカルザイ大統領が金曜日の説教でコーラン焼却事件を批判し、正義のための呼びかけを行ったところ、先週末にコーラン焼却を非難する数千人のイスラム教徒らがアフガン国内複数都市において抗議運動を行うに至った。多くのイスラム教過激派が存在するパキスタンでも同様の抗議デモが広く継続的に行われているが、これまで暴力を伴う抗議デモに至ったことは報告されていない。
アフガニスタンの抗議デモは暴力に発展し、通りにある交番で爆発物が爆破され、イスラム教過激派組織タリバーン旗が掲げられ、「米国に死を」「タリバーン万歳」などのスローガンが叫ばれた。また暴徒による店舗襲撃の他、タイヤが焼かれたり、女子高が襲撃されるなどの事件も生じた。
3月20日、フロリダ州の教会にて、テリー・ジョーンズ牧師の監視の下、ウェイン・サップ牧師によってコーランが焼却された。テリー・ジョーンズ氏は2001年9月11日の米テロ事件を顧みてコーラン焼却を計画していたが、国内外から大きな非難を浴びていた。米オバマ大統領、クリントン国務長官もジョーンズ氏によるコーラン焼却計画を非難しており、ジョーンズ氏もコーラン焼却を行わないと誓っていた。
しかし今回焼却に至ったのは、同氏がイスラム世界に対し聖典コーランの正当性を擁護する機会を設けていたが、これまでに何の返答もなかったからであるという。コーランの焼却は公の場で行われたが、焼却する現場に集った人々は30人ほどしかいなかったという。当初コーラン焼却に対する注目度は低かったが、最終的には多くの死傷者を生じさせる抗議デモにまで発展することになった。
抗議デモ参加者はアフガニスタンの国連事務所を襲撃し、職員らが死傷したが、ジョーンズ氏は「大変衝撃を受けているが、責任は私たちにはありません」と述べているという。なお、タリバーンは今回のアフガニスタンで生じた抗議デモについて「タリバーンは関係していない。これはイスラム教徒としての信仰に基づいた純粋な行動である」と言及している。
世界福音同盟(WEA)は1日、今回の抗議デモ、およびジョーンズ氏によるコーラン焼却事件に関して強く非難する声明文を発表した。WEA代表のジェフ・タニクリフ博士は抗議デモについて「ジョーンズ牧師による行動がどんなに忌まわしいものであり、同意できない行動であったとしても、それに暴力で返すやり方は決して正当化されることはありません」と述べた。
またジョーンズ氏によるコーラン焼却事件については、「ひとつのキリスト教輪郭団体を運営しているジョーンズ氏はキリスト共同体およびキリストの教会の教えを代表した行動を示していないことを強調します。既にこの団体によるコーラン焼却については非難させていただいでおり、この件について米国内のイスラム教指導者らと親密なコンタクトを取ってきています。WEAではいかなる信仰の共同体の書も焼却されたり冒とくされるようなことはあってはならないと信じております。WEAではすべてのキリスト教徒にいかなる他宗教の人々に対しても軽蔑したり挑発するような行動をとらないように呼びかけています」と述べている。
またイスラム教指導者らに対しては、「イスラム教共同体がこのような暴力を二度と起こさないように要求しています。WEAではイスラム教指導者らに対し、この小さなキリスト教過激派団体がイスラム教の聖典を焼却した行為は、世界のキリスト教徒から絶対的に非難されるべき行為であり、このような行動は世界に20億人存在するキリスト教徒の真実なる信仰の姿を現すものではないということを、イスラム教信徒らにはっきりと説明されるように促しております」と述べている。
WEAは福音主義キリスト教徒に対し、世界のすべての暴力行為が終焉を迎え、平和がなされるように祈ることを呼び掛けている。