現地時間2日午前11時頃(日本時間同日午後3時頃)、タリバーン武装組織の暗殺標的ナンバーワンとされていたパキスタンのクリスチャン閣僚であるシャバズ・バッティ少数民族関係相(42)が殺害された。
バッティ氏は同日朝、自宅を出発したところ、見知らぬ銃を持った男が同氏の車に向けて発砲を行ったという。その後すぐイスラマバードの病院に搬送されたものの、病院に到着した時点で死亡していた。
バッティ氏には通常複数のセキュリティガードが警護しているが、同日バッティ氏はひとりで出かけ、ガードに付き添わないように命じていたという。
タリバーン武装組織広報担当者のイサヌラ・イサン氏は「バッティの暗殺はすべてのパキスタン国家の冒とく罪に当たる人間に対するメッセージである」とCNNに告げた。
バッティ氏は同国で冒とく罪のため死刑判決を受けようとしている初めての女性アシア・ビビさんの件で同国内のおいて議論を醸していた冒とく法について見直しを要求しており、同国イスラム教過激派の反感を買っていた。
米クリスチャンポスト紙は先月ワシントンD.C.でバッティ少数民族関係相と会い、インタビューをし終えたばかりであった。同紙によると、バッティ氏は、パキスタンの冒とく法に反対しているために、死の脅威に直面していること、同氏はタリバーン武装組織の暗殺対象ナンバーワンに指名されていることを明かしたという。
同氏が殺害される前のタリバーン武装組織の暗殺対象ナンバーワンは穏健派イスラム教徒の元パンジャブ州知事サルマン・タッセル氏であった。同氏も同じく冒とく法に反対の意を示したことで反感を受け、1月4日に暗殺された。
バッティ氏は2月にクリスチャンポスト紙記者に対し「宗教の自由を守り、少数民族の権利、そして冒とく法に反対する人々の声を政府に届けるためにさまざまな苦慮をしている。私は暗殺されるかもしれない。しかし私は自分の信条に従って行動し続けたい。声なき人々の声を政府に届け続けたい。イエスキリストは私たちのためにご自分のいのちをお捧げになられた。私もその姿に倣うことでタリバーン武装組織による脅しに対し恐れずに行くつもりだ。イエスキリストに従う者として、私の運命は自身のために声を発することのできない人のために生涯を捧げることにあると思っている」と述べていた。
パキスタン冒とく法はイスラム教過激派がキリスト教徒やその他少数派を迫害するために濫用されているという強い非難を浴びている。ビビさんの件では確かな証拠もなしに冒とく罪で逮捕され、死刑に直面している。
ビビさんはクリスチャンで5人の子供を持つ母親でもある。イスラム教の預言者について批判した疑いで2009年6月に逮捕され、暴力を受け、刑務所に入れられた。ビビさんは上訴した裁判が行われる日を待っている。
パキスタンにおけるキリスト教徒の割合は1.5パーセントである。バッティ氏の殺害を受け、ザルダリ大統領側近のファラナズ・イスパハニ氏は「パキスタン国内で生じている人権擁護派、リベラル派および進歩派の声を抑圧する(タリバーン武装組織による)戦略的な活動である。政府および各州はこのような殺害者たちに力強い反対の立場を示し、パキスタン国家の非常に重要な部分を守っていかなければならない」と述べた。バッティ氏はパキスタン内閣閣僚メンバーとして初のキリスト教徒であった。