イスラム教の開祖である預言者ムハンマドと同じ名前の男性の名刺を捨てたことが、預言者ムハンマドへ対する冒とく罪に当たるとして、パキスタンの医師が13日までに拘束された。ムハンマドはイスラム圏では一般的な男性の名前。少数派の迫害や個人的な報復などのために悪用されていると国際社会から批判されている同罪の典型的な悪用例と言えそうだ。共同通信が伝えた。
今回拘束されていることが明らかになった医師はイスラム教徒。警察によると、製薬会社で働くムハンマドという名の男性が医師を訪問。男性が名詞を渡したが、医師が名刺を捨てた。男性はこの医師の行為が冒とく罪に中るとして告訴した。
同国では先月、キリスト教徒の女性アーシア・ビビさんが同じ冒とく罪で、女性としては史上初めて死刑判決を受けた。ビビさんは昨年6月に「キリスト教徒がくんだ水は飲めない」などと言われたことが原因で、イスラム教徒の女性と口論となった。その後、ビビさんの発言にイスラム教を冒とくする内容があったとして訴えられ、約1年半もの間拘留され、先月8日に死刑を言い渡された。これにより同罪を定める冒とく法について国際的な批判が高まっていた。
冒とく法は、1986年に独裁者ジアウル・ハク大統領が制定。ムハンマドへの冒とくに対する罰則は死刑か終身刑のみとなっているが、一審で死刑を言い渡されても多くは上級審で覆され、過去に死刑が執行されたことはない。
しかし、イタリアに拠点を置くキリスト教系メディア「アジア・ニュース」によると、1990年から2010年までの20年間で死刑判決を受けた人の内46人は、司法上の罰則意外のことで殺害されているという。46人の内28人はキリスト教徒で、拘留中に死亡しているのが発見されるなど、不可解なケースがあるという。