聖書に登場するヒソプは、オレガノに近い低木「マヨナラ・シリアカ」で、現在ハーブとして流通している「ヒソプ(ヤナギハッカ)」とは別物であると言われている。
イスラエルの岩地や山など至る所に自生し、5月頃になるとたくさんの小さな白い花を咲かせるとともに強い芳香を放つ。「聖なる草」を意味するヘブル語が語源となっており、ユダヤ教では清めの儀式に用いられる。
出エジプト記を見ると、過ぎ越しの祭りについての記述で「そして、一束のヒソプを取り、鉢の中の血に浸し、鴨居と入り口の二本の柱に鉢の中の血を塗りなさい。・・・主がエジプト人を撃つために巡るとき、鴨居と二本の柱に塗られた血を御覧になって、その入り口を過ぎ越される」(12・22〜23、新共同訳)とある。
また、ヨハネによる福音書を見ると、「そこには、酸いぶどう酒を満たした器が置いてあった。人々は、このぶどう酒をいっぱい含ませた海綿をヒソプに付け、イエスの口もとに差し出した」(19・29)とあり、イエスはこの直後、「成し遂げられた」と言って息を引き取られた(同30)。
ヒソプで門に塗った血により死を免れたイスラエルの民が象徴するように、十字架にかけられたイエス・キリストの血によって全ての人が死から贖われた。こうして旧約で伝えられた全ての預言が実現し、救い主はその使命を「成し遂げられた」のだ。