チベット仏教とヒンズー教が多数派を占めるブータンで、キリスト教の公認へ向けた動きが出ている。08年に初の成文憲法が制定され、立憲君主国へと移行した同国では昨年、宗教団体法が施行されが、チベット仏教とヒンズー教の2つの宗教しか認められていない。キリスト教ニュースを扱うコンパス・ダイレクト・ニュース(米国)によると、同国で宗教団体の認可権を持つ機関が12月末にもキリスト教団体の認可に向けた協議を行うという。
同国ではこれまでチベット仏教とヒンズー教以外の宗教が認められていなかったため、他の宗教を実践することや、教会などの建築もできなかった。同国のキリスト教人口は概算で6000人程度と考えられているが、コンパス・ダイレクト・ニュースに情報を提供した現地のドージ・テェリング氏は、キリスト教が公認されれば、チベット仏教やヒンズー教と全く同様の権利が保障されると強調する。
同国の国民議会は、1969年、1979年の決議で、チベット仏教とヒンズー教以外の宗教を禁止しており、テェリング氏は、今回の動きは同国において大きな転換と見ることができると指摘。「ブータン憲法はチベット仏教がブータンの霊的継承物であるとする一方、ブータン国王は全ての宗教の保護者であるとも定めている」と述べ、ブータンがキリスト教を同国の一つの宗教として認める意思があることを説明する。
キリスト教公認の動きは、同国のジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王の同意の下にあると見られており、ジグメ・ティンレー首相も同意しているものと見られる。ワンチュク国王は、現在30歳と非常に若い王であるが、米国、英国での留学経験があり国内での高い支持を得ている。
匿名の情報者によると、ブータン政府はキリスト教の一団体を承認することで、同団体に同国内の全てのキリスト教を管轄させる方針。同国のヒンズー教徒は全人口の約20%を占めるが、同じく「ヒンズー宗教コミュニティ」という一団体が政府に認可され管轄している。