【CJC=東京】ノーベル平和賞選考委員会は、2010年のの受賞者に、中国人作家、劉暁波氏(54)を選んだ、と10月8日発表した。劉氏は、北京で1989年に起きた天安門事件以来、民主化を訴え、現在は、共産党の1党支配を批判する「08憲章」と呼ばれる文書をインターネット上に発表したとして、国家と政権の転覆をあおる罪に問われ、懲役11年の判決が確定、東北部遼寧省錦州市の刑務所で服役中。
賞の選考にかかわるノルウェーのノーベル研究所の所長が、ことし6月、中国政府の幹部から、劉氏を選べば中国との関係に影響が出るとして、圧力とも受け取れる警告を受けたと伝えられた。中国外務省も、劉氏は「中国の法律を犯し、刑罰を科された人物であり、その行為はノーベル平和賞の趣旨に反するものだ」と述べている。
劉氏は10日午前、錦州市内で妻の劉霞さん(49)と面会したことがわかった。関係者が明らかにした。受賞決定の事実などを伝えたとみられる。劉氏は、「賞を天安門事件の犠牲者にささげる」と涙ながらに語ったという。
劉氏の受賞決定に、改めて同氏の釈放を求めるなど中国政府に開放政策を求める声が広がっている。昨年の平和賞受賞者バラク・オバマ米大統領は「中国は経済改革で劇的な発展を遂げたが、劉氏受賞は、中国の政治改革が、その発展に追いついていないことが示すものだ。すべての基本的人権は尊重されねばならない。中国政府に劉氏のできるかぎり速やかな釈放を求める」と述べた。ドイツ、フランス両政府も、劉氏の釈放を要求した。
台湾の馬英九総統は当初、祝意を示すだけにとどめていたが、9日、台北での在外華僑の集まりに参加した際、「中国大陸当局が劉暁波氏を出所させ、自由にするよう希望している」と明言した。
1989年に平和賞を受賞しているチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は11日、「中国政府は個人が政府と異なる意見を持つことを認めないが、中国の人々を救う唯一の方法は、透明性のある、開かれた社会をつくることだ」と成田空港で共同通信記者に語った。
バチカン(ローマ教皇庁)文化評議会関係者は、バチカン放送に、劉氏への授賞は「中国で、展開しつつある問題と進歩双方への関心を高めることになる」と語った。
香港のカトリック教会正義と平和委員会、『香港基督教関心協会』は、劉氏釈放を求める声明を8日発表した。香港基督教協議会のポ・カムチョン総幹事は、劉氏の受賞は全く趣旨に叶ったものだ、と歓迎の意を表明している。
台湾の人権、環境保護、女性運動など約50団体も、共同声明で、劉氏を速やかに釈放するよう中国当局に要求した。声明は、中台間で結ぶ協定に人権擁護の項目を盛り込むことも求めている。