年間200万人の5歳未満の乳幼児が死亡しているインドで、政府と市民が共同で設立した保健ボランティアの女性チームが成功を収めている。
「下痢が原因で子どもが死ぬとは知らなかった。」2歳のひとり娘を失ったシャンタさんとラハさん夫婦は、知識不足だった自分たちをいまでも責め続けている。「2日間自宅で看病していたが、病院に連れていったときには手遅れだった。」
人口約10億人、日本の約9倍の国土を持つインドでは、貧困率と非識字率の高さ、保健施設の不足により、本来は基礎的な知識で予防することが可能な病気が原因でいのちを落とす乳幼児が後を絶たない。特に、生後1カ月以内に100万人の新生児が基礎的な医療を受けられないことが原因で死亡している。
この問題を解決するために、インド政府は自治体や市民と連携して、地域に根差したボランティアチーム「ミタニンズ」(地元の言葉で「友だち」の意)を設立した。
ミタニンズのスタッフは全員女性で、多くは公教育を受けていない。そこで、国際援助団体(NGO)セーブ・ザ・チルドレンなどの協力を得てトレーニングを受け、薬の処方や栄養カウンセリング、乳幼児の病気や発育に関する教育、医療施設との連携など必要な技能を習得している。現在、こうしたスタッフ約6万人が地元で活動を行っている。
セーブ・ザ・チルドレンによると、インド中部のチャッティスガル州(人口2080万人)では、2002年に8・5%で国内ワースト2位だった同州の乳幼児死亡率は3年後に6・5%まで改善した。加えて、出産後2時間以内に母乳を与えた率は24%から71%に向上し、3歳未満の子どもが下痢になったときに経口補水塩を与える率は3%から12%に改善された。
ミタニンズの成功は女性の地位の改善にもつながった。多くのスタッフは官庁に勤務しており、保健施設の充実を働きかけたり、部族の財政問題、森林伐採、政治腐敗、アルコール依存の改善に向けた取り組みを実施するなど、保健福祉に対する意識の向上にも貢献している。(以上、出典元:Save the Children State of the World's Mother 2010より)
国連児童基金(ユニセフ)の08年報告によると、インドでは5歳未満の子どもの死亡率が6・9%で世界ワースト1位(日本0・4%)、70人に1人の妊産婦が治療ミスや医療サービスの不足が原因で死亡しているという。
インド政府は公共医療施設や医療保険制度の整備に積極的でないとして、ヒューマン・ライツ・ウォッチなど複数の国際人権団体は改善を求めている。