【CJC=東京】フランスのサルコジ政権が、移動生活する少数民族ロマや「非定住者」への取り締まり強化を相している。法を犯した外国出身者の本国強制送還に加え、治安要員を襲撃した者の国籍を剥奪する方針も表明した。
中部サンテニャンで、仲間が警官に射殺されたことに反発した「非定住者」の集団が警察署を襲撃したのを受け、7月28日の関係閣僚会合で、「非定住者」の違法キャンプを強制撤去するとともに、ロマの多くがルーマニアやブルガリア出身とみられるのを念頭に、外国籍の「非定住者」が法を犯せば本国へ強制送還する方針を決めた。
仏政府は、欧州連合(EU)外相会議で、「ロマ問題の解決でEUは協力すべきだ」と主張したが、60万人ものロマを抱えるルーマニアは、「ロマを犯罪集団として扱うべきではない」と指摘した。欧州の人権組織『欧州会議』の幹部も、「仏は非定住者と市民を平等に扱うべきだ」と指摘している。
仏の「非定住者」は、キャンピングカーで国内各地を移り住む元遊牧民など約40万人を指しており、流入したロマ2万人とは区別される。人権団体は、政府の対応を「非定住者とロマを混同している」とも批判している。
8月6日、外国籍のロマや仏国籍の非定住者が住む違法キャンプ300カ所の撤去が開始された。世論調査では8割がこの措置を認めているが、人権団体は、「人権侵害」と批判しているなど、国内外から「外国人や移民の排斥だ」との強い批判も出ている。国連の差別撤廃委員会では「ナチスまがいの政策」との異例の強い意見が出た。15日には、ロマ族などが高速道路を車両で一時封鎖しサルコジ政権に抗議した。
北部リールのアルチュール・エルベ神父(71)は22日、4年前に受章した国家功労章を政府に返上した。同神父はリール周辺で暮らすロマの支援活動をしている。神父は「この3カ月のロマの状況はひどく、彼らは戦争を耐え忍んでいる」と指摘。「私には、政府に戦争をやめさせるには最後のボールしか残っていない」と語った。
南部エクサンプロバンス地区の大司教も同日、ロマ対策を発表した7月末の大統領演説について「ロマが劣った民族と受け取られる演説で許せない」と述べた。
イタリアのマローニ内相は21日までに、国内に居住するロマについて、十分な収入や定住先などの要件を満たしていなければ、欧州連合(EU)市民であっても出身国に送還する政策を進める考えを明らかにした。
内相は、EU欧州委員会がこうしたロマ送還を禁ずる決定をしているため、9月6日に予定されるEU内相会合で、決定を見直すよう働き掛けると語った。