またある役人が、イエスに質問して言った。「尊い先生。私は何をしたら、永遠のいのちを自分のものとして受けることができるでしょうか。」イエスは彼に言われた。・・・「あなたには、まだ一つだけ欠けたものがあります。あなたの持ち物を全部売り払い、貧しい人々に分けてやりなさい。そうすれば、あなたは天に宝を積むことになります。そのうえで、わたしについて来なさい。」すると彼は、これを聞いて、非常に悲しんだ。たいへんな金持ちだったからである。(ルカ18:18〜30)
今日開いた聖書箇所は、ルカの福音書だけでなく、他の福音書にもある有名な物語であり、ひとりの多くの資産を持った真面目な青年が出てきます。2千年前の、食べるものにも事欠く貧しい時代の中で、彼は、将来を保証された、社会的地位のある役人でした。経済的に恵まれ、若さにもあふれる、三拍子そろった人物でした。
ある時、彼はイエスの所に来て、「私は、何をすれば永遠のいのちを受けることができますか」と、悩みを打ち明けます。イエスの答えはシンプルでした。「まことの神おひとりを尊び、『姦淫してはならない。殺してはならない。盗んではならない。偽証を立ててはならない。父と母を敬え。』というモーセの十戒を守りなさい」というものでした。彼は、「そのようなことはみな、幼い時から守っています。でも何か、もやもやした感覚や恐れがあり、人生の中に平安がありません」と答えます。イエスは、彼のただ一つの問題点を見抜いておられ、「あなたの持ち物を全部売り払い、貧しい人に分けてやりなさい」と言われます。すると、真剣だった彼の表情がとたんに暗くなり、イエスの元から去って行きます。
彼の心は、所有しているたくさんの財産に結びついていて、「とてもそれを売り払うことなどできない、自分が死ぬようなものだ」と思ったのでしょう。イエスは、彼を見て、「裕福な人が天の御国に入ることは、とても難しいことだ。金持ちが神の御国に入るより、らくだが針の穴を通るほうが、もっとやさしい」とおっしゃいました。それを聞いた弟子たちはびっくりして、「それでは、誰が天の御国に入ることができますか」と尋ねます。するとイエスは、「人にはできないことが、神にはできるのです。人は、神のいのちによって生まれ変わり、天の御国に入ることができるようになるのです」と答えられます。
イエスは、ただ単に、お金持ちを批判したのでしょうか。お金をたくさん持っていてはだめで、貧しい人に分けてやり、みなが平等な生活をすることを望んでおられたのでしょうか。そうではありません。イエスは、目先のお金のことではなく、お金に縛られる人の心が見落としがちな、心の盲点をはっきりと語って下さったのです。私たちが永遠のいのちをいただき、幸せになる二つの秘訣を学びたいと思います。
1.天に宝を積む
この青年は、悪い人ではありません。むしろ、真面目に律法を守り、立派に見える人でした。十分の一献金をし、施しをし、断食をしていたはずです。お役人の仕事も真面目にしていたことでしょう。でも、自分は良い人間だと思い込み、神の恵みから離れてしまいました。
私たちは、天に宝を積む、ということを真剣に考えたいと思います。「私はクリスチャンで、イエスを信じて歩んでいるから大丈夫」という思い込みに、十分注意したいのです。毎日の生活の中で、今、自分がしていることを、神が「良くやった。あなたは忠実なしもべだ」と喜んでおられるか確認したいのです。考え方が、地上のことばかりに終わっていて、神に結びつくことを忘れていないでしょうか。いつの間にか、礼拝出席、祈り、御言葉を読む態度、奉仕、捧げものが、「やるべきことはやっています」と形だけになっていないか気をつけましょう。
2.天に宝を積むことを実行する
イエスは、単なる理屈ではなく、「さあ、行って、自分の財産を売り、貧しい人に分け与えてごらんなさい。その上で、わたしに従って来なさい」と行動することを求められました。
イエスと青年のそばで聞き耳を立てていた弟子たちは、決して賢くはありませんでした。イエスの水準にはいつも届かなくて、叱られてばかりでした。でも、イエスが、彼らを認めておられたことがありました。それは、天に宝を積むことを一生懸命やっていたことです。
中途半端な口約束だけで、良いことを先延ばしにするのではなく、天に宝を積むことを思い切って行動してみましょう。そうすれば、イエスからの恵みをいただくことができます。どんなに忙しくても、一週間に一つや二つは、神に喜ばれることをやってみましょう。やって損はありません。天において永遠のいのちを受けるだけでなく、この世においても、何倍もの祝福を受けます。そこに私たちの幸せの鍵があるのです。
万代栄嗣(まんだい・えいじ)
松山福音センターの牧師として、全国各地、そして海外へと飛び回る多忙な毎日。そのなかでも宗教を超えた各種講演を積極的に行っている。国内では松山を中心に、福岡、鹿児島、東京、神戸、広島、高松にて主任牧師として活動中。キリスト教界のなかでも、新進気鋭の牧師・伝道者として、注目の的。各種講演会では、牧師としての人間観、ノイローゼのカウンセリングの経験、留学体験などを土台に、真に満足できる生き方の秘訣について、大胆に語り続けている。講演内容も、自己啓発、生きがい論、目標設定、人間関係など多岐にわたる。
また、自らがリーダー、そしてボーカルを務める『がんばるばんど』の活動を通し、人生に対する前向きで積極的な姿勢を歌によって伝え続け、幅広い年齢層に支持されている。
国外では、インド、東南アジア、ブラジル等を中心に伝道活動や、神学校の教師として活躍している。