【ニューヨーク=CJC】米国の学生キリスト教運動(SCM)は40年間休眠状態だが、この10月に再出発する。米教会協議会(NCC)の通信が7月21日報じた。
『米学生キリスト教運動』(SCMUSA)が10月8日からジョージア州アトランタのモアハウス大学で創立総会を行う。主題は、「暴力克服=過去と出会い、現在に関わり、未来に力を」。
20世紀前半には、『合衆国大学キリスト教運動』(UCM)と呼ばれた米国の組織が、民権と平和への証しをすることで知られていた。ただメンバーが別な形のキリスト教運動へ転向したことから、40年前に解散した。
今日の倫理的社会的危機に対する応答するため新組織への期待が高まっていることで、全米のSCM学園分会に学生が結集するようになった。10月に、大学や現存するSCM分会の代表が集まり、全国運動を発足させる。
世界学生キリスト教連盟(WSCF)のルチアーノ・コヴァックス北米地区幹事は「学生たちは、進歩的なキリスト者の懸念に向けて、それぞれの信仰を集団として行動に導く方法を、共に論議するために集まる。SCMUSAは、米国のエキュメニカルな学生運動を組織し、米国の学生を世界組織につなぐ役を果たすことになろう」と語る。
今回の動きは、2009年1月、WSCFがサンフランシスコで「新しい預言者の起用、運動の発生」と呼ばれる地域会と協議を行った時から始まった。それが『世界学生キリスト教連盟北米地区』(WSCF・NA)の正式立ち上げとなり、新たなSCMUSA設立を準備する委員会発足にまで進んだ。
学生キリスト教運動には、青年キリスト者が、危機や現実の事柄に、信仰の基盤から応答出来るようにすることに深く関わって来た歴史がある。
その「応答」は、第二次世界大戦の間にドイツの告白教会でもなされた。1950年代、60年代には米国の公民権運動で教会や学生キリスト者の形成や行動でも「応答」が行われた。今日でも抑圧、荒廃、不正、戦争、嫌悪などの諸問題への「応答」がなされている。
エキュメニカル運動の現在の指導者も、学生キリスト教運動の「遺産」に負うことが大きいと認識している。その豊かな「遺産」は、100年以上にわたって若い指導者を育てたことにある。その中にはマーチン・ルーサー・キングやディートリッヒ・ボンヘッファーといった人たちも含まれる。
学生たちは、「イエス・キリストの徹底的な生涯に従う運動を打ち立てるために、闘い、死ぬこともあった。彼らが道を開いたのだ」と、「同窓生」でもあるアリス・ハージュマンWSCF米国常議員会共同議長は言う。
1895年に設立されたWSCFは、世界各地域で活動している100以上の国レベルの運動のネットワーク。世界教会協議会(WCC)成立の先駆けとなり、現在はその「助言者」の立場にある。また国連やユネスコでは「協議資格」を得ている。
米国の学生キリスト教運動は、WSCFとの連携のもとに、設立されたもの。学生が主導する、キリストに根ざす「草の根」組織。学生や若者が、自らの声を上げ、指導力を磨き、関係性の変革的なネットワークを形成出来るように、正義と平和を積極的に求め、権力に対して真実を語り、地域、国、世界的なレベルで、社会にある抑圧を克服するために活動する。