【CJC=東京】米YMCAが『ザ・ワイ』(The Y)と呼ぶことになったことは、ニューヨーク・タイムズ紙が報じて以来、欧米各国のメディアの関心を呼んでいる。
米国では、メキシコ湾の重油流出事故で有名になったBPのように企業名の略称化が進んでいる。、最近、『米国公共ラジオ』も『NPR』と改名した。
ただ米YMCAは、単なる略称化ではなく、名称変更により、「青少年育成、健康な生活、社会的責任」の各方面で活動しているYMCAの存在を社会に印象付けようとするブランド戦略を立てた。ただ正式名称としての「YMCA」は残ると見られる。
副会長兼マーケティング担当のケイト・コールマン氏は「暖かさ、純粋、歓迎」といったYMCAの特徴を訴えたい、と言い、「もう何年も『ザ・ワイ』と呼ばれて来た。それを正式なものにしたかったのだ」と7月12日、ワシントンのナショナル記者クラブでの会見で語った。
「リブランディング」と呼ばれる今回の名称変更は、ロゴマークからネット・サイトの改変、さらには公共奉仕の発表方法にも及んでいる。
ニール・ニコル会長は、『ザ・ワイ』の使命(ミッション)が変わったわけではない、として「私たちのやっていることを短く簡潔に語りたい。呼び名もそうだ」という。
YMCAは1844年、ロンドンでジョージ・ウィリアムズら12人の青年キリスト者によって、青年に対する啓蒙および生活改善のための奉仕団体『キリスト教男子青年会』として創立された。
今回の変更は、1500人を対象に行った調査を、2年以上にわたって分析した結果、多くの人が、YMCAの働きを理解していないことが分かったため、という。ただ、その経過が知らされておらず、突然の発表だったことが、メディアの関心を呼んだ、と見られる。
全米各地のYMCAでは、「キリスト教」を強調するプログラムに今後も力を入れようとするところもある。「わたしたちのミッション(使命)は、全ての人に健全な「スピリット、マインド、ボディ」を育成しようとするプログラムに、今後もキリスト教原則を生かすことだ」と、オハイオ州ニューアークの『リッキング・カウンティ・ファミリーYMCA』のエド・ボーレン総主事は、現地紙『アドヴォケイト』に語っている。
カナダ・バンクーバーのYMCAが5月3日に中心街のバラードストリートに開設したセンターには、この2カ月で、5000人が会員登録をした盛況ぶり。ブランド変更に水を差すような動きだ。サービス・マネジャーのケリー・ウォーカー氏は、「YMCAはただのジムとしてではなく、コミュニケーションを図る場として多くに人に利用してほしい」と利用を呼びかけている。
世界YMCA同盟は、今回の米YMCAの動きに、リブランディング戦略は米国独自のもので、全世界のYMCA運動を左右するものではない、とする立場。
125国のYMCAによって構成されている同盟としては7月14日、「それぞれのYMCAは独自のコミュニケーションとブランド戦略を持っており、それはその国の独自性と会員制度と結びついている」と、米宗教専門RNS通信の取材に答えている。