インターネット―もはや日常のありふれた言葉となったが、生活や仕事で欠かせないインフラの一つとなっている。自前のホームページを持ち、ブログで情報を発信する教会、牧師も多い。電子メールであれば、ほとんどの人が何らかのかたちで利用している。
急速に普及したインターネットに、教会はどう向き合うことができるのか。インターネットを使った伝道の可能性とは。インターネットの現状とその可能性について「伝道」という視点で取り上げる。
■ インターネットを利用した伝道 海外の事例
フランスの企業家で牧師のエリック・セレリエ氏が運営する伝道用サイト「KnowingGod.net」(英語版 http://knowinggod.jesus.net ほか12言語)は、月平均100万以上のアクセスがある人気サイトだ。友人に語りかけるような言葉と聖句、イラストをスライド形式で順に読み進めてもらい、神の愛、罪、神のご計画、イエス・キリスト、と徐々に聖書の核心へと導く。祈りを手引きし、信仰の決心を助ける。
米グーグル社が提供するインターネット地図サービス「Google Map」を利用して決心者の所在地域をリアルタイムで知り、各地のボランティアによるフォローアップへとつなぐ体制も成果を上げている。
セレリエ氏は、05年にこのサイトをフランス語で立ち上げた際、予想を上回る反響に驚いた。6月22日現在までに同サイトを通して約195万人の決心者が与えられた。
世界190カ国以上で伝道活動をするキャンパス・クルセード・フォー・クライスト(CCC)は、04年にメディア伝道部門「グローバル・メディア・アウトリーチ(GMO)」を立ち上げてからこれまでに90以上のウェブサイトを開設した。昨年1年間のアクセス数は運営サイト全体で約6700万。約1000万人がイエス・キリストを受け入れる決心をしたという。
インターネット上で福音と出会い、信仰を決心した人に対し、その後のフォローアップを的確に行うことによって、決心者が教会へとスムーズに導かれていく。アプローチの流れをきちんと作り上げることと、複数のサイトを開設してユーザーとの接点を増やすことが、成功の鍵のひとつだ。
■ 60歳以上の利用者急増
総務省が今年4月に発表した「平成21年通信利用動向調査」によると、日本のインターネット利用者は9408万人(対前年比317万人増)で、人口に対する普及率は78%(対前年比2・7ポイント増)。先進国が多い北米(76・2%)、ヨーロッパ(53・0%)にくらべても高い数値で、世界平均の26・6%をはるかに上回る。
自宅のパソコンからのインターネット接続にブロードバンド回線を利用している世帯の割合は76・8%(対前年比3・4ポイント増)と普及率も高い。回線速度は日本が世界トップで、利用料金も日本は世界一安価な水準となっている。世界でも最もインターネット環境に恵まれている国が日本だと言える。
一方、利用者層には近年変化が見られる。これまで普及率が低かった高齢の世代でも利用者が増えているのだ。前出の動向調査によると、60〜64歳代の普及率は対前年比8・2ポイント増の71・6%、65〜70歳代では対前年比20・4ポイント増の58%だった。13〜49歳までの年代の普及率は95%以上と、インターネットを使えばこの世代をほぼ全員カバーできる水準だ。60歳以上のインターネット利用者が増えることで、世代を越えたアプローチが可能になってきている。(つづく)