日本キリスト教協議会(以下NCC)は山本俊正総幹事の署名のもと1日付で、都内の女性音楽教諭が東京都教育委員会を相手取り戒告処分取消請求の上告申し立てをしていた「君が代伴奏拒否訴訟」に関して最高裁が先月27日、上告棄却の判決を下したことに対し、「最高裁判所が、人間としての基本的人権に関わる『思想・良心の自由』に対して、法的な洞察を深めることなく、上告申し立てを棄却した」として抗議の声明を表明した。
NCCは声明で、最高裁の判決が「法の番人としての極めて中立性を欠いた不当な判決だ」と判決に対して異議を唱え、さらに憲法第19条の「思想・良心の自由」に制限を加える恐れがあり、将来的にキリスト者の「信教の自由」に対しても同じような制限が加えられるのではないかと、最高裁の判決に対して危惧を表明した。
「『君が代』が持つ歴史的背景を考えるとき、F教諭(戒告処分を受けた音楽教諭)の『私の思想・信条上からピアノは弾けません』という主張が正当なものであり、教育者としての悩みに悩みぬいた末出された誠実な態度である」として、処分を受けた教諭の主張を支持。また、03年10月に出された、国旗に対して起立斉唱することや、ピアノ伴奏を拒否した場合は処分するとした都教委の通達に対しては、「教育の中立性を損ない、民主主義の根幹を成す自由で批判的な精神を教育の場から締め出すもの」として非難した。
1、2審では「公務員は全体の奉仕者で、思想・良心の自由も職務の公共性を理由に制約を受ける」として請求が棄却され、最高裁判決では「斉唱への協力を強制することが本人の信念・信条に対する抑圧となることは明白。伴奏命令と思想・良心の自由の関係を慎重に検討すべきだ」(藤田宙靖裁判官)との反対意見がありながらも、「伴奏命令は思想・良心の自由を侵害しない」として、女性教諭に対する職務命令は合憲であると判断が下された。
この判決は、日の丸・君が代「強制」を巡る一連の訴訟での初の最高裁判決となり、今後の国旗・国歌に関する一連の訴訟に大きな影響を与える可能性がある。03年10月の都教委の通達の適否に関する訴訟では、東京地裁が昨年9月「通達とこれに基づく職務命令による強制は違憲」と判決を下しているが、今回の最高裁判決は、この訴訟の控訴審にも影響を与える可能性がある。
東京都日野市の市立小学校に勤務していた同教諭は、99年4月の入学式で校長から君が代のピアノ伴奏をするように命じられたが、「自分の思想・信条上からピアノは弾けません」と拒否。同年6月に、都教委から地方公務員法違反で戒告処分を受けた。