今月11日からサッカー・ワールドカップ南アフリカ大会が開催される南アフリカでは、国内外から訪れる旅行者の増加に合わせて人身売買の急増に対する懸念が強まっている。米クリスチャンポスト紙の報道によると、ワールドカップの開催期間中、奴隷売買や児童売春などで4万人から10万人が取り引きされる可能性が高いという。
今年1月に英タイム誌が南ア現地の人身売買に関する3週間にわたる調査の結果を報じている。これによると、ある人身売買業者はワールドカップ期間中が最も稼ぎ時だと話しているという。人身売買業者は児童を一晩45ドル(約4100円)から600ドル(約5万4800円)で旅行客らと取り引きする。人身売買の正確な件数を把握することは極めて困難で、地元の警察は頭を抱えている。
南アでは5月21日から「こども保護週間」を実施している。ズマ大統領は「イベント規模の大きさを利用して女性や児童を売買する犯罪者に機会を与えてはならない」として、親や保護者に対して子どもの保護と周辺の監視を強く呼びかけている。商業施設や試合会場で子どもが保護者とはぐれてしまい、犯罪者の格好の標的となるためだ。
ワールドカップ開催に先立ち、南ア政府は人身売買禁止法を制定し、警察による巡回を強化するなど警戒を強めていた。同法により容疑者を起訴することが容易になるという。
南アの首都ヨハネスブルグでは、5月中旬に南ア、ナミビア、ジンバブエなど大陸南部の諸国からキリスト教聖職者が集まり、現地での人身売買問題について話し合う会議『南部アメリカ諸国聖職者国際会議(IMBISA)』を行った。
ポスト紙によると、会議幹事のキリスト教聖職者、リチャード・メナツィ師は1週間で約300人の女性や子どもが人身売買業者に連行されて南アの北に隣接するモザンビークから南ア国内に入ったとの情報を発表した。
米ニューヨーク市に本拠を置く投資会社、クリスチャン・ブラザーズ投資サービス社は、ワールドカップを利用した人身売買や買春旅行を阻止する目的で、現地のホテル関係者に協力を呼びかけている。同社は4月、2度にわたって現地の8つの主要ホテルに書簡を送り、児童の性的搾取や人身売買を防止するための対応策を講じるよう要請した。対策を実施しない場合、このホテルを利用しないよう関連業界に呼びかけるとして断固とした行動を求めた。
南ア最大の教会、クリスチャン・リバイバル教会は4年前から麻薬中毒者と売春被害者の支援活動を行っている。同教会牧師で元特殊部隊の兵士だったアンドレ・ロンバルド師はタイム誌の取材に対し、「この国を訪れる人たちには、人身売買撲滅のために行動を起こしてほしい」と語った。