【CJC=東京】世界のカトリック教会で聖職者による児童の性的虐待事件が相次いで明らかにされている。また問題を引き起こした聖職者に対し、上長である司教の対応も、実態を明らかにせず、別の理由で人事異動を行い、さらに新任地で被害者を増やす結果になるなど、隠蔽体質への批判も高まっている。さらには現教皇ベネディクト16世も教皇着座前に、問題聖職者への配慮を優先させたのではないか、と火の手は一向に衰えない。
チリのカトリック教会は4月20日、聖職者による児童の性的虐待が未確認を含め、20件あったとして、被害者に許しを求めた。
世界各地での問題報道に、バチカン(ローマ教皇庁)はメディア報道を風評によるもの、と無視する姿勢をとっていたが、マルタを訪問した際、教皇は被害者と接見、深刻な思いと許しを求めるまでに至った。
ただ教皇が述べた言葉があいまいだ、という被害者グループの批判を受けてか、21日、水曜恒例のサンピエトロ広場での一般接見の際には、教会は「行動」を取る、と語った。
イングランドとウエールズの教会首座であるウエストミンスター教区のヴィンセント・ニコルズ大司教は、教会の「虐待を受けた人たち、無視され、信頼を失った、裏切られたと感じている人たちに対する心からの謝罪と深い悲しみ」を司教会議で表明した、大司教は、聖職者の犯罪を「教会全体に深刻な恥をもたらした」「深刻なスキャンダル」としている。
ドイツではアウグスブルグ教区のヨゼフ・ミクサ司教が性的虐待ではないものの、身体的虐待、財務上の不祥事に関する疑惑が絶えず辞任を教皇に提出した、と報じられた。教皇が辞任を認めたかは、まだ明らかになってはいない。
教皇は22日、アイルランド・カトリック教会キルデアとリーフリン教区のジェームズ・モリアーティ司教の辞任を承認した。聖職者の児童虐待疑惑問題の処理を誤ったという非難の中で辞任を迫られていたもの。
ベルギーでは、ブリュッヘ教区のロジャー・ファンゲルーウェ司教(73)が司祭時代から少年に対する性的虐待を認め、辞表を提出していたが、教皇は23日、辞任を認めた。
聖職者による少年への性的虐待問題で、米国の被害者の男性が、バチカンと教皇ベネディクト16世が虐待の事実を知りながら隠蔽していたとして、関係書類の公開などを求める訴訟を米ウィスコンシン州の裁判所に起こした。
バチカンは23日、この訴訟に「バチカンは原告の被害に関与しておらず、虐待の事実を知ったのも発生から数十年後だった」という声明を発表している。