【CJC=東京】教皇ベネディクト16世が枢機卿時代に米国の神父の児童性的虐待をもみ消したとの疑惑が米紙ニューヨーク・タイムズで報じられたことについて、バチカン(ローマ教皇庁)は3月25日、教皇を擁護するコメントを発表した。
疑惑は、米国のローレンス・C・マーフィー神父が1950〜74年に聴覚障害を持つ児童200人に対して性的虐待を行ったこと。ウィスコンシン州の大司教がバチカン教理省に問題を報告する書簡を2回送ったが、当時の同省長官だったヨゼフ・ラッツィンガー枢機卿(現教皇)は何の回答もしなかったという。
これに対し、教皇庁のフェデリコ・ロンバルディ広報担当は3月25日、教理省は当時、マーフィー神父の公的役割を制限し「自分の行為の重大性に対する全責任を取るよう(同神父に)求める」ことを提案したと反論した。
提案の根拠について、「マーフィー神父は高齢で健康状態も悪く、隠遁生活を送っており、20年以上にわたって虐待疑惑は報告されていなかった」と説明し、教理省の指導の4カ月後に同神父が72歳で死去したとを指摘している。
教会審問については、「同神父に対する民事ないし刑事手続きの可能性とは全く関係のないもの」と述べた。
バチカン機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』は、今回の報道を教皇とその側近を中傷しようとする「下劣な試み」と非難し、教皇の「透明性、意志の強さ、厳格さ」を強調。マーフィー神父をめぐる問題について「隠ぺいはない」とする論評を掲載した。AFP通信が報じた。