大地震の被害に遭ったハイチから子ども33人を無許可で隣国ドミニカ共和国へ連れ出そうとして、米キリスト教バプテスト派の慈善団体関係者男女10人が逮捕された事件で、米最大教派の南部バプテスト連盟(SBC)は5日、オバマ米大統領に10人について「(大統領としての)権限の範囲内でできるあらゆることをして欲しい」と求めた。
同連盟系列のニュースサービス「バプテスト・プレス」で5日公表された文書で同連盟は、今回の事件について、良き知らせを世界中の人々と分かち合いたいという「強烈な情熱」と、「神が創造された全ての人々への向けられた愛」によるものであった。これは、被災した人々の物的、精神的必要を目のあたりにし、他の人道団体とともに支援活動をしていた間の出来事として、特にはっきりとこの特徴を見ることができると説明。逮捕の理由となっている人身売買や誘拐への関与を強く否定した。
同連盟は、拘留中の10人についてすべての事実を把握しているわけではないと認める一方、10人の行動については、人道目的のためにハイチの子ども33人を国境を越えて連れ出そうとしたという認識だと語った。
「(10人の)拘留が続き、裁判で有罪判決が出た場合、これが世界中に動揺を与え、ハイチの人々が深刻に必要としている救援活動に対して間接的に批判を招くことになるのではないかと懸念している」と言う。
10人のほとんどは米アイダホ州にあるバプテスト派教会のメンバー。1月29日、生後2カ月から12歳までの子ども33人を連れ、陸路でドミニカ共和国へ出国しようとしたところをハイチ警察に逮捕された。
ハイチ政府の当局者が明らかにしたところによると、10人は4日、誘拐などの罪で起訴された。ハイチの法律では、同罪に問われた被告の保釈は認められていない。判決までには数カ月かかる見込みで、有罪となった場合、1件の誘拐につき5〜15年の禁固刑が科さされる可能性がある。
10人は、今回の行動について、児童養護施設が崩壊し行き場がなくなった子どもを救うために行った善意に基づく行為だったと説明しているが、一部手続きに不備があったことは認めている。
クリントン米国務長官は3日、事件について「ハイチ政府は子どもたちを守るために行動した」と述べ、10人は正しい手続きを踏むべきだったと指摘。しかし、事件いついては「不幸な出来事だ」と述べた。
33人の子どもは部孤児ではなく、その中の多くは親がいることが判明している。しかしハイチでは、極度の貧困に悩む家族が子どもを手放し孤児院へ渡すというケースが多くあるため、一概に親元から強制的に連れ離したとは言えない。地震発生前には38万人に上る子どもが孤児院に収容されていた。地震発生後もその数は増えていると見られ、一部の孤児院では、ここ数週間に子どもを孤児院に置いて去っていく親を幾人か目撃しているという。
今回の文書に署名したのは、同連盟執行委員会委員長兼CEOのモリス・チャップマン氏と同連盟会長のジョニー・ハント氏、同連盟前会長でオバマ大統領が設置した宗教指導者らによる専門組織「仰に根ざした隣人協力機構(Faith-Based and Neighborhood Partnerships)」メンバーのフランク・ペイジ氏ら。