韓国クリスチャントゥデイ紙(以下、韓国CT)の設立者で牧師の張在亨氏の異端性を示す証拠は不十分として、韓国キリスト教総連合会(CCK)異端似非(えせ)対策委員会(以下、異端委)の担当小委員会は21日、同氏を「嫌疑無し」とする研究結果を異端委の全体会議で発表した。
張氏に関する研究は、韓国CTと長期的な対立関係にある崔三更氏(韓国・光と塩教会牧師、統合教団)と朴ヒョンテク氏(同・担任教会無し、合神教団)ら4人が問題提起してCCKに働きかけ、異端委内で小委員会(委員数7名)を組織して行っていたもの。
全体会議では、小委員会の発表をうけて、高昌坤・異端委委員長が研究終結の是非を議場に質問した。崔氏と朴氏がここで研究の継続を訴えたため、異端委は追加研究を行う方針で合意した。
だが、小委員会は、張氏に関する疑惑は事実上解消したと認識している。小委員会はこれまで崔氏らが張氏について指摘した疑惑を過去2カ月にわたって調査し、資料研究や双方との面談を十分行ったと説明した。双方の説明が食い違う部分については証人を召喚して事実関係を整理した。委員には韓ミョングク氏(前異端委委員長、世界バプテスト連盟副会長)朴チョンイル氏(元CCK総務)ら異端研究の専門家が名を連ねている。
今月11日に行われた小委員会の最終会議では、張氏以外に、張氏が過去に総会長を務めていた合同福音教団の趙テヨン総務が、崔氏側からは崔氏、朴氏、ジン・ヨンシク氏、崔ビョンギュ氏以外に、崔氏らが証人として招待した李ドンジュン氏が参加。各自の説明と証言、質疑応答などを5時間以上かけて行った後、最終意見をまとめて議事録として提出した。参加した委員6人が約2時間にわたって議論した後、投票による採決となり、6人のうち崔氏側のジン氏を除く5人が「嫌疑無し」に賛成票を投じて決定した。
質疑応答で崔氏は、これまでと同様、自身の発言の根拠となる有力な証拠を提出せず、ただ持論を説明するだけにとどまった。また、李氏は現在精神科に通院していると明かし、聴取にあたる委員たちを困惑させた。
小委員会関係者は韓国CTに対し、「張氏については既にCCKから2004年、05年と2度にわたる調査の結果、『嫌疑無し』という結論を下している。今回も長時間にわたり慎重に検証したが、やはり『嫌疑無し』という結論で終結した」と説明した。この関係者は、全体会議で崔氏らが研究の延長を申し出たことについて、「(研究が)不十分と主張する人たちの意見は尊重するが、研究を延長したところで新しい材料が出てくるのだろうか」と語り、延長した研究の結論が出るまでは今回の「嫌疑無し」という結論を尊重してほしいと話している。
異端委委員長の高氏は張氏に関する嫌疑が無いとの認識を明かしており、当初12月10日を期限としていた研究期間の延長について「研究結果に問題があるから再研究するというのではない。延長したいという側の主張を尊重して、では研究しようということになったに過ぎない」と説明した。また、「これはあくまで『研究』であって『再調査』ではない。小委員会の決定を無効化しようとするものでもない」と説明し、一部のメディアによる拡大解釈を警戒する発言をした。研究は小委員会が継続して行い、構成員を変更する予定はない。
これまで執拗に張氏と韓国CTを批判し続けてきた崔氏だが、その背景には朴氏、ジン氏、崔ビョンギュ氏と結束して自分たちに対する韓国CTの批判報道を妨害し、新聞市場で自分に近い利害関係者を支援する目的があったとの観測がなされている。崔氏は、自分の三神論(注1)と月経胎孕(たいよう)論(注2)に関する異端疑惑で過去に自教団から異端認定(2002年)されたことがある。この認定は現在も解除されておらず、教団の監査委が現在も調査中という。韓国CTは崔氏の異端疑惑について当初から継続的に報道を続けている。
崔氏は、自分への異端認定と同じ02年頃、張氏に対する問題提起を出版社に持ち掛けるなどして張氏や韓国CTとの対立関係を深めていった。張氏についてCCKが第1次調査で無嫌疑と結論付けた後、崔氏が異議を唱えた結果、CCKが第2次調査を1年間にわたって実施して無嫌疑声明を発表。事実上の第3次調査となる今回の研究でも担当小委員会が嫌疑無しとの決定を発表した。
一方、追加研究が決まったことについて張氏側は「研究や調査が不十分だというなら、いくらでも応じる」と自信を示した。また、崔氏が全体会議で張氏側の説明を遮断したうえ、小委員会で証拠採用されなかった資料を議場で配布して異端委委員の不安を煽ったことが判明しており、小委員会関係者から「不当行為」との批判の声が上がっている。
張氏側は、崔氏らが証人の家を訪ねて懐柔したとの疑惑を調査するべきだと指摘している。また、張氏側は、崔氏らが連絡をとり続けている李ドンジュン氏が会議場に杖をついて現れるなど著しく健康を損なっていることを懸念しており、崔氏側が李氏に過度の負担をかけている可能性もあるとして、資料の捏造を含めて調査するべきだと話した。
権力を行使して対立する意見を議場から排除し、一方的な論理を紹介して競合メディアを批判する崔氏の手法だが、これに類似する主張を展開していた韓国メディアは既に有罪判決を受けている。韓国紙「荒野の声」は、香港の某団体による調査結果を利用して昨年5月、張氏に関する虚偽の報道を行い名誉を毀損したとして刑事告訴された。第一審(ソウル中央地裁、今年7月)は、同紙の報道が「誹謗することを目的」に「公然に虚偽の事実を提示し被害者の名誉を毀損した」と認め、同紙発行人の趙ヒョグン被告に対して名誉毀損 の罪で100万ウォンの罰金命令を下した。第二審(ソウル高等法院、今年10月)も、「韓国キリスト教界のために記事を書いた」とする被告人の主張を退 け、第一審判決を支持、同じく100万ウォンの支払いを命じている。
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「神は一つの霊ではなく、3つの霊から成る」とする崔氏の思想。三位一体に反するとされる。大韓イエス教長老会統合は第87回総会(02年)で、同氏が三神論思想を有していることと、同氏の出版社が異端教会から金品を受領していたことが発覚したことを受けて、同氏を教団異端似非対策委から永久追放することを決議した。同氏が委員会に復帰したことについて、金氏は「正式な手続きを経ていない不当な異動」と指摘しており、同教団総会議長に対し、崔氏の採用取消と適切な処分を要求している。
注2 月経胎孕(たいよう)論:「イエス・キリストはマリアの月経を通して生まれた」とする崔氏の思想。韓国雑誌『教会と信仰』(05年7月15日付)で崔氏が発表したもので、母マリアの処女懐胎と矛盾するとされる。統合教団は第91回総会(06年)で「不正確な発言で、不必要な思索」との見解を決議した。韓国ワールドクリスチャン聖書学研究所のシム・サンヨン所長は、「三神論」「月経胎孕論」を主張する崔氏こそ「異端中の異端」であるとして、同教団とCCKに対し、崔氏の問題点として指摘する10項目について公開討論するよう要請している。