人口1万2千人という英国の小さな村の教会に注目が集まっている。信徒数わずか8人の教会だが、礼拝堂を子どもと保護者向けのプレールームとカフェに改装して地域に開放。人が集まらず日曜学校を終了したという数年前の状況とは打って変わって、現在では毎日数十人が教会に出入りし、受洗者が毎月与えられるほどの復興を見せている。
英国第3の都市マンチェスターの北東約100キロにあるバーストール村に教会員数8名のウェスレアン・メソジスト・ハウデンクロウ教会がある。今年で創立123年。村内のハウデンクロウ集落は、近くに鉱山があり、教会の創立当時は炭鉱作業者や鉄道作業者が多く、婦人は近くの羊毛工場で働く人が多かった。1872年の献堂式には500人が出席し、地域の教会として栄えた。
だが、時代の流れとともに村民の生活様式は一変。村の人口は増え、区画整理された近代風の住宅が立ち並ぶ村となった。スポーツセンターや中高一貫の女子校が建ち、村内外への人の出入りが劇的に増加した。日曜日に活動する少年サッカーチームと、それらを対象とした飲食店も増えた。願っていたはずの村の経済的発展は教会の助けにならず、むしろたくさんの遊興をもたらし、教会から人を遠ざけた。村にある教会が相次いで日曜学校を取りやめ、ハウデンクロウ教会も数年前に日曜学校を終了。小・中・高校生向けの各集会も人が集まらなくなった。
昨年、ハウデンクロウ教会は革新的な計画を実行に移した。2階建ての教会建物は1階が村の図書館、2階が礼拝堂。この2階部分(280平米)を、室内用のジャングルジムや様々な玩具をそろえた子どものためのプレールームとして大改装した。同フロアには一緒にいる保護者のために軽食を楽しめるカフェコーナーを設け、歓談と交流の場を用意した。生後1歳までの乳幼児専用のスペースも別にある。1階には静かに読書や祈りをするスペースを設け、ボランティアの教会員が常駐して悩みを聞いたり、一緒に祈ったりできるようにした。訪れる人が気軽に祈りの要請をするための掲示板とボックスもある。
礼拝は、冬は1階で、夏は2階のカフェに椅子と講壇を配置して行う。毎月第一日曜日は、夕方から歌と聖書の話、工作などを取り入れたファミリー礼拝を別に行っている。今では数十人が曜日を問わず毎日立ち寄る憩いの場となっている。この教会復興は教団内で話題となり、今年10月、キリスト教慈善団体らの発行する雑誌『インスパイア』の選ぶ「地域社会に大きな影響を与えた教会、信徒、団体2009」に入選した。
信徒数10人以下にまで落ち込んでいたハウデンクロウ教会がどのように復興したのか。教会の存続をかけて、家庭訪問やトラクト配布、アンケートを実施したがどれも効果はなかった。始まりは4年前、一人の信徒に、教会を子どもたちが安心して遊べる「子どもの家」にしようというビジョンが与えられたことだった。
両親と子どもたちをクリスチャンの手による活動的な教会に招き入れたい。人に説教する場ではなく、人が助けを必要としているときにいつでも開かれており、歓迎してくれる場として認識してもらいたい。教会の多様なかたちを提案したい。
来会者を対象にしたアンケートでは、膨らむビジョンに友好的な答えが多く返ってきた。信徒のビジョンが祈りに、祈りが確信に変わった。
確信を実現させようと数カ月にわたり数々の援助団体に支援を要請した結果、1団体が必要資金の6割を負担してくれることになった。これによってさらに勇気付けられ、個人や他の教会からも支援を集めることができた。’07年2月に改築工事を開始。その間、盗難や不法侵入、天井パネルの落下など、失望しそうなときもあったが、後援者や州の保護観察所に支えられた。祈りと労苦のすえ、同年10月、「ウェスレー子どもの家」が初めて地域住民に公開された。
子どものための場、家族同士で交流できる安全で温かい場を提供したいというビジョンが、21世紀の教会の新しいあり方として、1つのモデルを示したと言える。
主が家を建てるのでなければ、建てる者の働きはむなしい(詩127:1)。だが、主が家を建てたのであれば、建てる者の働きは決して無駄にならない。主から与えられた一つのビジョンとそれを目指した行動が、無駄にならず実現したという事実を分かち合いたい。