最近、「ダヴィンチ・コード」という小説が世界的に話題になっている。日本でも既に500万部が売れたという。この小説はキリスト教をテーマとしながら、反キリスト教的な思想が露骨に現れていることから特に福音主義者らを中心に危惧する声が挙がっている。
ダヴィンチ・コードを反駁する書籍(The Da Vinci Deception, Erwin Lutzer著)も出版されており、あるキリスト教団体では映画化されたダヴィンチ・コードの上演を禁止しようとする運動も起こっている。更にダヴィンチ・コードの虚構を暴くサイト(http://www.jesusdecoded.com)なども出現した。このようにキリスト教界で危機意識が高まっているにも関わらず、日本での対応はとても遅れているような気がする。少なくとも、これらの反論書やサイトを積極的に紹介、宣伝する動きがあって良いはずだ。
ダヴィンチ・コードの問題は内容もさることながら、まだイエス・キリストについて何も知らない人がこの本に接し、誤ったキリスト教の知識を得てしまうところにある。例えば、キリストの子孫がヨーロッパの貴族になったという初代教会の霊知主義的な主張がなされており、このような「とんでも本」を本気で信じてしまう人々が必ず現れるだろう。最も良い方策としては、本当の真実を伝える情報を発信し、読者が客観的な立場から両方を見比べ正しい認識を持つようにすることであろう。
ここで注目したいのは、一冊の本がキリスト教界に及ぼした影響力だ。まさに「ダヴィンチ・コード現象」とも言うべき社会現象になったと言っても過言ではない。このような現象は、世論がメディアに大きく依存し、その及ぼす影響力の速さと広さは近代社会の情報化と伴い急速に増大していることを端的に示している。「ダヴィンチ・コード」に限らず、ドラマや漫画などが社会現象になることは今や珍しくない。また最近はブログなどのインターネット媒体が人々の思想、考え方や流行を大きく支配している。
これらのメディアは主に世俗的なエンターテナーの役割を果たし、キリスト教とは無関係か害となる情報も多い。しかし、逆にメディアを利用して味方にすれば宣教の強力な道具となる。実際にメディアへの投資は期待以上の成果を出しており、メディアを積極利用することが主な宣教形態になりつつある。例えば「パッション」や「ミッション」また「ベン・ハー」などのキリスト教映画は多くの観衆を感動させ、キリストのメッセージを伝えることに成功している。直接的ではないが、「ナルニア物語」、「マトリックス」、「ロード・オブ・ザ・リング」などの人気映画もキリスト教的なメッセージを多くの人々に伝えている。
以前、本紙にこのダヴィンチ・コードを伝道に積極活用するという記事が紹介されたことがある。人々がその本に関心があるのは、キリスト教にそれだけ関心を持っているからだという。より積極的にキリストの愛を紹介し伝えられる、クリエイティブなメディア戦略が必要なのは自明だ。
肉的な快楽や眼の情欲を駆り立てる娯楽が洪水のように蔓延している世の中で、ノンクリスチャンの人々はクリスチャンが思う以上に、人々の霊を潤し、真の幸せを与える命の泉が湧き出ることを願っているのかもしれない。