9月21日から24日まで北海道で開催された第5回日本伝道会議(JCE5)で、会議の核として行われた具体的な宣教協力の場であるプロジェクト(作業部会)の「環境」分野では、世界的な課題として取りざたされる環境問題についての議論が行われた。同プロジェクトでは、環境問題が経済的成長を遂げた人類が直面する「最大の試練」としては単純に捉えられるものではなく、人類の度を過ぎた欲求である「むさぼり」という罪に根本的な原因があると指摘。現在行われている環境問題についての議論が、実際の対策としての効率的な話し合いに限定されており、現代人の価値観、ライフスタイルそのものが問われている問題であるという認識を持つ必要性を指摘した。
同プロジェクトではJCE5開催前に計6回の会議を開いて、環境問題に対するキリスト者としての基本的な理解を同プロジェクトの趣意書としてまとめた。
趣意書では、神が創造された初めの世界は「はなはだよかった」(創1:31)ものであったが、アダムに体表される人類が罪を犯したことにより、良い面と悪い面が混在する世界となり、その具体的な一つの事例として環境問題があると指摘。しかし、この罪ある人類に救い主としてのイエス・キリストを遣わすという「恩恵」を神は与えてくださり、「人間は歴史形成において、この恩恵にどう応えるか、大きな責任がある」。だが、教会がこれまで、本来福音が持つ社会や個人を変革するダイナミックな力を体現できてこれなかったとし、福音に基づく生き方を提示して、世の光、地の塩としての役割を明らかにすることで福音宣教に寄与する、としている。
同プロジェクト・リーダーの住田裕氏(日本長老教会幡ヶ谷キリスト教会牧師)は22日の基調講演で、エコロジカルフットプリントという指標を紹介し、全世界の65億人が日本人と同じ水準で生活すれば地球2.4個分、米国人と同じ水準で生活すれば地球6.3個分が必要になり、人類の活動量が「すでに、地球が循環できるような範囲を超えている」状態であることを指摘した。しかし、これらの実態が罪によるものだという認識がほとんどない。聖書では「このむさぼりが、そのまま偶像礼拝なのです」(コロサイ3:5)とむさぼりについて強く断罪しており、住田氏は「食べるにも、飲むにも、何をするにも、ただ神の栄光を現すためにしなさい」(コリント第一10:31)のように、飲食という基本的なライフスタイルにおいて、聖書の言葉に従うキリスト者としての生き方が求められていると語った。
また、23日には稲垣久和氏(東京基督教大学教授)が講演した。稲垣氏は、18世紀以降の世界は「欲望を解放することが善」という功利主義が幅を利かせるようになり、その中で、キリスト者が「欲望を抑制することが善」とする倫理観をどのようにして提起していくが問われていると語った。稲垣氏は、問題は個人のキリスト教倫理のレベルだけで議論できるものではなく、社会構造的な「むさぼりの罪」をえぐり出す必要があると強調。個人倫理ではなく社会を説得する理論が必要だと訴えた。
同プロジェクトでは会議後の取り組みとして今後は、参加者間のネットワーク構築や、研究会「聖書と一緒のエコの会」(仮称)の開催、ホームページなどでの情報発信を行っていく予定だ。