第5回日本伝道会議(JCE5、9月21〜24日開催)の初日に行われた主題講演で、竿代照夫氏(イムマヌエル綜合伝道団代表)と山口陽一氏(東京基督神学校校長)が講演した。4日間にわたって開かれる会議の位置付けを示す講演で、両氏は全国から集まった参加者約1900人にそれぞれの視点で、同会議の重要性と意義を語った。
JCE5企画推進プログラム局長を務めた竿代氏は、同会議のテーマ「危機の時代における宣教協力」について、新たな協力を創出するという理想論を語るのではなく、すでにある協力関係をさらに発展させようとする現実志向的な考えがあると説明。宣教協力の基礎が公同教会観にあると強調し、共通した信仰告白である「使徒信条」を真実なものとして捉えるならば、「宣教協力はオプションではなく、私たちの生き方となるはずだ」と語った。
一方、「日本福音同盟(JEA)は、聖書信仰を曖昧にしたままのいわゆるエキュメニズムと一線を画しつつ、聖書的エキュメニズムを追求する」と指摘。JEA理事長や聖書宣教会会長などを歴任した舟喜信氏の「JEAとは単なる寄せ集め的連合ではなく、公同教会観に基づく教会的な集まりである」という言葉を引用するなどして、聖書信仰に基づいた公同教会観に立つことの重要性を語った。
具体的には、このような公同教会観に立って個人、教会、教派の3つのレベルで大きな思考、枠組みの転換が必要だと主張した。個人レベルにおいてはエゴイズム(自己中心主義)からイーチアザーネス(Each-other-ness:お互い主義)へ、教会レベルにおいてはマイチャーチイズム(自教会中心主義)からインターチャーチイズム(協教会主義)へ、教派レベルにおいてはデノミネーショナリズム(自教派中心主義)からインター・デノミネーショナリズム(協教派主義)への転換が必要だと言う。
しかし、教会、教派の枠にとらわれない「超教派」「超教会」という活動については、各地域教会や各教派の自立性、独自性、尊厳を重んじたものになるべきで、それらを考慮しないようなイメージに陥りやすい「超」ではなく、「協」教会的、「協」教派的な交わりが求められていると指摘。「超教派的な運動が教会から離れたところで発生して、その後に各教会・教団の支援を仰ぐという図式ではなく、教団間協力・教派間協力の実として協教派的な伝道が生まれるという図式を求めていくべき」だと語った。
一方、会議開催前から日本のプロテスタント宣教150周年の歩みをまとめてきた山口氏は、150年を振り返っての日本の教会の感謝と悔い改めについて語った。
山口氏は、開国とほぼ同時期に始まった日本のプロテスタント宣教が、その前にあったカトリック信徒による信仰の戦いに助けられた点があると指摘。また、日本の宣教のために来日した宣教師と、その宣教師を派遣した海外の教会あっての日本の宣教であり、ゼロからスタートしたプロテスタントの信徒数が現在は約61万6千人、教会数が約8200教会まで増え広がったことに、「主に感謝し賛美をささげる」ものだと語った。
悔い改めとしては、戦時下に日本の教会が、天皇制国体に埋没し、国家的な偶像礼拝を拒否できなかったことを「致命的な過ち」であったと指摘。また戦争による災厄をアジアの人々に対してもたらし、「その罪は主の前に大きく、教会はさばかれてしかるべきであった」と語った。
そして、今後の日本宣教の展望として、具体的には日韓の宣教協力、在外邦人伝道、帰国者クリスチャンの受け入れが当面の課題だとし、福音主義を堅持し、教会形成を重視した地道な伝道がなければならないと語った。また、それだけではなく、戦時下のあり方についての悔い改めに基づく政教分離と平和構築、さらにそれをふまえた社会貢献、福祉、共生、環境への取り組みなど、「社会と隣人に仕える共同体としての教会」が求められていると語った。