明治、大正、昭和期の洋画家、和田三造(1883〜1967)の描いた画集「イエス・キリスト画伝」をテーマにしたセミナーが23日、オリエンス宗教研究所で開かれる。「和田三造『イエス・キリスト画伝』にみる脱ヨーロッパ化をめぐって」と題して、ヨーロッパ中世美術史専攻・白百合女子大学講師の保坂ひろみ氏が発表する。
和田は1907年に「南風」で第1回文部省美術展覧会(文展)の最高賞を受賞すると、翌年の第2回文展でも再び最高賞を受賞。09年には文部省美術留学生として渡欧し、フランスを中心にヨーロッパ各国を巡りながら、洋画や工芸図案を研究した。27年、日本における色彩の標準化の必要性に着目し、日本標準色協会を創立。45年には日本標準色協会を日本色彩研究所に改組し、理事長に就任、51年に日本初の総合標準色標「色の標準」を完成させた。53年には映画「地獄門」で第26回アカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞。58年に文化功労賞を受賞している。油絵はもとより、日本画や染物、映画などの舞台美術やアニメーションに至るまで、多様な分野で足跡を残した。
同研究所は宗教法人カトリック淳心会に属する研究・出版組織。カトリックとプロテスタントによる「共同訳聖書」誕生のきっかけを作ったことでも知られる。02年から研究活動としてセミナーを始め、「信仰の目で人間の歩みを見つめていくことによって、信仰の光が見えてくる」(加藤信朗・哲学者)との立場から、日本の精神史・思想史を見つめなおしている。現在は共同研究の形で、新渡戸稲造著「武士道」をその一つの入り口として、「信仰の目をもってする近代日本精神史の諸相の検討」を研究テーマにしている。
午後6時半から。会場は、同研究所(東京都世田谷区松原2‐28‐5)2階図書室。セミナーの参加申し込み、問い合わせは同研究所(03・3322・7601)。