インドのタミル人クリスチャンが、スリランカに居住する30万人近くのタミル人難民への支援を呼び掛けている。難民らは過去6カ月間、避難キャンプでの過酷な生活を強いられている。タミルの難民たちの多くはクリスチャンで、26年間にわたるスリランカ軍部とタミル人テロ組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」との紛争により、難民キャンプでの拘束生活を余儀なくされてきた。LTTEは今年5月17日に敗北を宣言。スリランカ軍部とLTTEとの長きにわたる紛争は事実上終結している。
インドのタミル人クリスチャンらによってインド政府に提出された書簡には、「難民キャンプで数千人もの人々が飢えやその他の困難に見舞われ死亡している。私たちはインド政府に対し、NGOが難民キャンプで活動し、避難民らの必要最低限の物資を確保し、人権の尊重が守られるように願いたい」と書かれていた。難民キャンプの現状に関しては、複数の人権活動団体から食料や水の不足、医療ケア不足とともに子どもや女性への暴力や虐待などの問題が指摘されている。
ニューヨークに本拠を置く国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は22日、難民らの避難キャンプへの拘束を非難し、「世界指導者らはスリランカ政府に対し、拘束キャンプに不当に拘束されている26万人以上の人々を即時解放するように訴えるべきである」との声明を発表。同声明は、先週米ピッツバーグで開催されたG20サミットおよび国連総会に送付された。ヒューマン・ライツ・ウオッチのアジア所長ブラッド・アダムス氏は、「難民たちは避難キャンプに閉じ込められているが、解放される権利がある。今がそのときだ。世界指導者らは難民たちの解放に向けて働きかけるべきだ」と述べた。
声明を受け、国連人権問題専門家のウォルター・ケリン氏は25日、スリランカ政府の運営する難民キャンプを視察。国連からの視察結果の報告はまだ得られていないが、スリランカ政府は現在、人権団体や海外政府からタミル人の難民キャンプ解放を強く要求されている。一方スリランカ軍部では、難民キャンプを解放するとLTTEテロ組織の再活動が懸念されるとの声も上がっている。国連によると、スリランカ政府は9月15日時点で、26万4583人のタミル人を難民キャンプに拘束している。