【CJC=東京】現存する聖書写本としては最古のものの一つとされるシナイ写本の一部が、エジプトのシナイ半島にある聖カタリナ修道院でこのほど偶然に発見された。
ギリシャの学生ニコラス・サリス氏(30)が、18世紀の文書に関する博士課程の研究のため同修道院で調査をしていた際、綴じ込みの中に隠れていた断片を発見した。
シナイ写本は、大英博物館などの提唱で、断片をつなぎ合わせた写本をネット上に公開する計画がこの7月実現したが、同氏がこの計画に参加していたことから、断片がシナイ写本の一部であることがすぐに判断出来たという。書体と各欄の高さが決め手となり、未発見の部分であることも分かった。
断片はヨシュア記の冒頭部分と一致している。発見は修道院ライブラリアンのジュスティン神父によって確認された。
同神父によると、他の綴じ込みの中にも写本がありそうだが、損傷なしに見つけ出す技術が修道院にはない。シナイ写本を使った綴じ込みは他にも18点はある。
シナイ写本は、皇帝コンスタンティヌスの要求で330年から350年の間に書かれた、という伝承がある。バチカン写本とともに、最古の写本と考えられている。ドイツの学者コンスタンティン・フォン・ティッシェンドルフが1844年に同修道院で発見し、10年間にわたって多数の断片を持ち返った。
さまざまな経緯を経て現在は大英図書館、独ライプチヒ大学図書館、聖カタリナ修道院、ロシア・サンクトペテルスブルグの国立図書館の4カ所に分散、所有されている。同修道院では1975年に新たなページが多数発見され、エジプト政府がこれを保管している。