【CJC=東京】英語『新国際訳』聖書(NIV)が2011年に改定版を発行することになった。イングランド王ジェームズ1世の命令で翻訳された欽定訳聖書が1611年に刊行されてから400年、英語聖書の訳出が米国で盛んになり、しかも今回は全世界の英語使用者を意識した訳出を心がけているという。
米国のゾンダーバン出版社、『ビブリカ』(国際聖書協会とセンド・ザ・ライトの後身)、NIVの聖書翻訳委員会(CBT)が9月1日、イリノイ州パロスハイツのトリニティ・クリスチャン・カレッジで共同記者会見を行い発表した。同地はNIV訳出の動きの拠点とも言える所。
NIV改定のスポンサーは『ビブリカ』で、版権も所有する。ゾンダーバン社が発行元になる。翻訳委は、様々な教派、地域出身の15人で構成されている。
ゾンダーバン社によると、改定版の刊行に伴い元版と、05年に刊行した現代国際訳(TNIV)の刊行は取り止める。TNIVは英語の中の性差のある表現を撤廃し、現実に即したものとして刊行されたが、賛否両論が激しく戦わされている。
「時を経て、英語も変化する中で、NIVはますます時代遅れになっている。そのことは当初から予想されていたもので、それに応える義務がある。NIVを世界中の英語を話す人たちが理解出来るように守り続けることを欲するなら、その人たちが今使っている語彙を受け入れ、それを重んじなければならない」と『ビブリカ』のキース・ダンビー会長は述べた。
翻訳委のダグラス・ムー議長は、「NIVが1978年に刊行されて以来、英語は商業とコミュニケーションの分野で基本的に国際語となった。その結果、語法の変化も急速に進んでいる。この現実が、私たちに、理解を徹底させるためにはNIVもそれに即応する責任を担わせることになった。委員会として、この課題に対する私たちの応答は、当時の一般人が話している言葉であるヘブル語、アラム語、ギリシャ語などで書いた元々の聖書記者の例に従うことだ。新約聖書が『コイネー』という共通ギリシャ語で書かれたように、私たちのNIVへの狙いは、共通英語としての『コイネー』とでも呼べるものに訳出することだ。2011年版は、NIVの本来の価値を今日の読者のために守り強めることが全てだ。正確さは元より、原著者が、英語を話すとしたら、今日の世界規模の英語を話す受け手のためになしたようにしようということだ」と述べた。
一方で、翻訳委は、改定が頻繁すぎると、それによって引き起こされる問題も考慮している、としてムー氏は「聖書を現代英語に対応させることと、人々は2〜3年ごとに新しい聖書を購入しなければならなくなることとのバランスを慎重に検討しなければならない」と言う。
9月2日の会見では、性差に中立的に訳出されたTNIVが焦点となった。
ゾンダーバン社のモエ・ガーキンス社長は「TNIVは影響力があったものの、福音派を分裂させた。新NIVを2011年に刊行したら、TNIVの刊行は止める」と語った。
『聖書における男性と女性協議会』のランディ・スティンソン会長は、TNIV刊行停止を称賛、「ゾンダーバン社と『ビブリカ』が誤りを認め、福音派にこの数年、論議を巻き起こしたことを認識したのは、非常に謙虚なことだ」とニュース発表で述べている。
スティンソン氏は、ムー氏と会談し、性的に中立が言語の正確さについて真剣に検討されることを信じる、と語った。スティンソン氏が非難した変更の中には、聖書の意味を全く変えてしまったものもある、と言う。