「熱心で怠らず、霊に燃え、主に仕えなさい。」(ローマ12:11)
"熱意は、はしか、おたふくかぜ、流感のように流行しやすい"という言葉があります。しかし病気と違うのは、熱意は良いものだということです。この熱意という伝染病によって、心の中に自分で築いた牢獄から、あなたを解放して下さい。あなたは変わり始めます。あなたが変わると、それに応じてあなたの人生も変わっていきます。あなたは今まで経験したことのない幸福感と満足感に満たされるでしょう。
あなたの回りの人もその影響を受け、環境さえも変わってしまうことでしょう。
「熱意(エンスージアズム)」と言う語は、ギリシャ語の"エンテオス"から派生したもので、「あなたのなかにいる神」あるいは「神の充満」といった意味があります。従って、熱意には、問題を解決する奇蹟的な力があるのです。
フランク・ベドガーが、ペンシルバニヤ・ジョンスタウン・チームを解雇されたのは、"おまえはのろまだからクビにする"と言う、簡単な理由でした。それから一週間ほどして友人がコネチカットのニューヘブンに紹介してくれました。彼は新しいチームでやり直そうと堅く決心し、今だかつて見たことがないようなピチピチした動作、生き生きとした言葉で張り切りました。ダイヤモンドの周囲に猛烈なスピードで送球したり、あまりにも猛烈な勢いで滑り込みをしたので、三塁手はボールをファンブルし、貴重な点を稼ぐことができました。その日は四十度近い暑さでしたが、それ以上に彼は燃えていました。
その結果、三つの事実が現われました。
第一に、彼はあまりにも熱中したので、恐怖心を全く克服してしまった。神経質でおどおどした、ものおじするフランク・ベドガーに"さようなら"です。
第二に、彼の熱心さが、同じチームの選手たちに良い影響を与えて、みんなが燃え始めた。
第三に、暑気にやられることもなく、返って未だかつてないくらい、体の調子が良くなった。
新聞は火の玉ベドガーと賞賛し、給料は七百パーセントも増加しました。それは彼が物事に対して熱意を持ってやった、それだけのことだったのです。毎日、毎日、火の玉のような熱意でぶつかったのです。
その後、彼は不運なことに、バウンドした球を拾い、逆の方向へ投げようとモーションを起こした時、どうしたはずみか腕を折ってしまい、野球ができなくなりました。しかし、熱意を持って事に当たる精神は失いませんでした。彼は惨さんたる失敗のどん底から、セールスマンとして、アメリカ第一の成功と最高給を勝ち取り、多くの人々に「熱意」というすばらしい贈り物を、その著書によって今日も贈り続けています。
人生というゲームでの勝敗を決するのは、この「情熱」なのです。エマソンは、"偉大な業績が、熱意なしに達成されたことは、一度もない"と言いました。一介の職工から身を起こし、遂にはベツレヘム・スチールの会長になったチャールズ・シュアブも、"熱意を持って仕事をするなら、どんな仕事であっても、必ず成功する"と断言しています。
熱意はみせかけや、まねごとではありません。熱意は精神の姿勢です。困難な状況に陥った時、あなたの心の姿勢が問題解決の重要な鍵となります。「熱意」を持つことは、問題があるのはいいことだと"考える"ことです。問題の後には、それに勝る幸運が待っているのを知っているからです。そして必ず成し遂げることができると"信じ"ます。だから、熱意は"方法も見出す"のです。そして情熱的に、熱意を持って解決のために"行動"します。
それが問題であれ何であれ、心の底から興味を抱き、実行することに心弾ませ、必ずできるという自信があふれ、やる気満々の状態へと高めてくれるものが「熱意」です。
「熱意」を身につけるためには、熱意を持って行動することです。
すぐに、あなたの心の中に新しい活力が湧いてきます。自分を変えるためには、まずその気になることです。自分を憐れんだり、他人のあら探しをしたり、自分の職業や社会的地位を恥じたりしていては熱意は湧いてきません。自分を変えるためには、希望と情熱のこもった考えだけを表現する習慣を身につけることです。すばらしい成功を収めるのは、決して知識の力だけによるのではありません。仕事に打ち込む情熱の力によるのです。「熱意」は恐れを吹き飛ばし、仕事を一段と成功に導き、より健康的で、裕福で、幸福な生活を、あなたのものにしてくれます。もう一度繰り返します。「熱意」の人となるためには、熱意を込めた"行動"をすることです。
あなたは今日から三十日間、まず毎朝、ベッドの中で、手を強く握って"ヨシッ!やるぞ!大いに働くぞ!"と、数回自分に言い聞かせるのです。そして起き上がると同時に、シャツを着替えながら、再び力強い声で、"ヨシッ!今日も大いにやるぞ!"と力を入れて、自らの熱意を奮い立たせるのです。つまり自分を駆り立てて、無理にでも「熱意」のある行動を起こせば、あなたは自ら情熱的な「熱意」の人になっていきます。
三十日間、本気で継続して下さい。継続実行するならば、「情熱」が、「熱意」があなた自身の中に燃え上がります。
また、「熱意」と物事に対する興味とは、二人三脚の関係にあります。自分が興味を持てないことに熱意を燃やすのは難しいのです。物事に興味を持つためには、知識が必要です。だれでも自分がよく知っていることには興味が持てるし、興味を持っていることは、もっと深く知りたいと思います。知識―興味―知識―興味―知識! と、まるで坂道を転がる石が加速していくように、「熱意」は増していきます。
自分の人生、仕事、会社、勉強、友人たちについて、一段と知識を加え、理解を深めてみましょう。まだ知っていないことが沢山あります。どん欲に知識を求めなければなりません。そうしてこそ初めて、一歩前進できるのです。
ある会社で、もっと勉強したい社員のために、研修コースを設けました。希望者はだれでも参加できるというすばらしい研修でした。コース開設前には十五%の希望者がありましたが、実際の参加者は十二%、そしてコースを終了した社員は、わずか六%だったそうです。
この例からもわかるように、競争者はたいしたことはないのです。"どんぐりの背くらべ"とよく言いますが、だからこそ、あなたが抜きん出られる可能性がいっぱいあるのです。あなたが猛烈に勉強し、知識を増やし、やる気を起こして熱心に仕事に取り組むなら、すぐに成功者の仲間入りをすることができます。
「熱心で怠らず、霊に燃え、主に仕えなさい。」(ローマ12:11)
あなたの中に「熱意」が生まれる時、偉大な人生が始まるのです。
こんな話があります。ある冒険好きの少年が、険しい山に登り、鷲の巣を見つけました。彼は巣から卵を一つ取り出し、養鶏場で巣ごもりしている鶏に卵を抱かせました。やがて数羽のひよこと一緒に、一羽の子鷲がかえりました。子鷲はひよこの中で大きくなりました。自分がひよこ以上のものであるとは、夢にも思いませんでした。
ところが成長するにつれ、からだの中に奇妙な感覚が渦巻いて来ました。一度ならず子鷲は考えました。"オレには、鶏以上のものがあるに違いない!"
ある日のこと、大きな鷲が養鶏場の上を飛ぶのを見ました。その時、子鷲は不思議な新しい力を感じたのです。胸がドキドキしました。大きな鷲が飛び去った時、"オレは大空を飛ぶ、高く舞い上がるのだ!"子鷲は一度も飛んだことはありませんでしたが、力と本能が体にみなぎりました。子鷲は翼を広げました。そして力強く羽ばたき、小高い丘の頂に登り、さらに翼を大きく広げ、大空を悠々と飛び続けました。子鷲は偉大な自分を発見したのです。
「熱意」があなたの中に渦巻く時、新しい自分を発見します。成功した人が持っている共通の能力の一つに、つむじ風に乗って、嵐を自分の思いのままにする能力があります。どこに住んでいようと、どんな仕事に携わっていようと、あなたもつむじ風に出会います。人生には困難や試練はつきものです。それに巻き込まれるか、それに乗るかによって、あなたの人生は決まってしまうのです。問題がやって来た時、ひよこのようにおじ惑い逃げ回るか、子鷲のように翼を広げるか、それは「熱意」があるかないかにかかっています。つむじ風に乗る時、さらに高い人生を生きることができるのです。
スタンレー・ジョーンズはもう疲れ果てていました。インド宣教において、何年間もの努力のかいもなく、成果が出なかったからです。彼はアメリカに帰り、普通の仕事につこうと決心しました。そんなある日、ヒマラヤのふもとの村でぼーっと過ごしていると、一羽の鷲がヒマラヤに向かって飛び立つのが見えました。乱気流のせいでしょうか。ある所まで飛ぶと、羽を強く叩かれて、バタバタと落ちてしまうのです。鷲は何回も同じことを繰り返していました。スタンレー・ジョーンズは、その鷲の無駄な努力に、自分を重ねて見ていました。
ところが遂に、鷲は成功したのです。乱気流にうまく乗って、悠々と翼を広げ、ヒマラヤの空高く上昇して行きました。その光景を見たスタンレー・ジョーンズの中に、「熱意」が生まれて来たのです。彼はその日から、偉大な信仰の人になりました。「熱意」とは、人間のエネルギーなのです。「熱意」は、あなたと成功の間に横たわる障害物をはね飛ばす力です。
熱意の持つもう一つの大きな力を紹介しましょう。
それは「熱意」は他の人に影響を与えるものです。
あなたが人を説得したり、人を使う立場の人であれば、「熱意」ほど役に立つものはありません。「熱意」は伝染します。人から人へ、言葉よりもはるかに早く伝わります。また電流のように強烈に周囲の人に働きかけます。
生まれたばかりの赤ん坊は、元気な声を張り上げて、自分の魅力、個性、欲望、必要を熱心に訴えます。子供は、一生懸命に自分が必要なオモチャのことを話します。その目がキラキラ輝くのを見ると、父親はその熱心さに打たれて買ってしまいます。青年ならば、恋人に対して自分の夢や未来を、熱心に時間の経つのも忘れて語ります。熱心な教師は、教室で生徒や学生たちに良い感化を与え続けます。セールスマンは、燃える情熱で製品を売り込み、買った方は"あの熱心さに負けたんだよ"とにこにこ笑いながら言います。社長が変わっただけなのに会社が活気づき、会社員に社長の熱意が乗り移り、会社全体が燃え上がることもよくあることです。「熱意」こそリーダーシップの秘訣なのです。
ハーバード大学の心理学者ジェームスは、"人は泣くから悲しいのであって、悲しいから泣くのではない"と言いました。あなたが「熱意」に燃えて生きたければ、「熱意」に燃えているように振る舞うことです。「熱意」を、声の調子、行動、顔つき、言葉、考えなどパーソナリティー全体にめぐらせてごらんなさい。「熱意」を持って行動すると、生きることが楽しくなります。元気が湧いてくるだけでなく、他の人からも愉快で快活な人間だと思われるようになります。この不思議な特性、エンスージアム(熱意)をあなたが身につけさえすれば、あなたは生き生きとして、ユーモアがあり、人の心を引きつけて離さない人間になります。ダイナミックなパーソナリティの持ち主に、そして、真のリーダーになるのです。
できやしないと言うが
だれかが言う「できやしない」
彼は笑いながら答えた。「確かにできないかもしれない」
しかし彼は、やってみるまではできないなどとは認めない男だ。
彼は、笑みを浮かべて取りかかった。心配でも彼は隠した。
事に取りかかる時、歌を歌う。そして、できないかもしれないことを、やってしまった。
だれかがあざ笑う、「そんなことやれないよ」
「できた人なんかだれもいないんだから」
しかし彼は、上着を脱ぎ、帽子をとり、とにかく、まずやり始めた。
顔を上げ、笑みを浮かべ、気遣いやへ理屈は捨てて。
彼は歌って仕事に取りかかり、できないかもしれないことを、やってしまった。
できるはずがないと、多くの人があなたに言う。
多くの人が失敗を予言する。
多くの人があれこれ口うるさく言う。あなたに襲いかかる危険のことを。
しかし彼は、笑みを浮かべて取りかかる。上着を脱ぎ、元気良く。
歌を歌いつつ、あなたも取り組むのだ。
「できない」と言われたことを、あなたはやり遂げるだろう。
榮義之(さかえ・よしゆき)
1941年鹿児島県西之表市(種子島)生まれ。生駒聖書学院院長。現在、35年以上続いている朝日放送のラジオ番組「希望の声」(1008khz、毎週水曜日朝4:35放送)、8つの教会の主任牧師、アフリカ・ケニアでの孤児支援など幅広い宣教活動を展開している。
このコラムで紹介する著書「輝き・可能性への変身」(2000年、プレイズ出版)は、同師が「ラジオ番組 希望の声」シリーズとして出版したもの。机上の空論ではなく、著者自身がその生涯において実現し、今も継続している生きた証しを紹介している。