
米フロリダ州オーランドを拠点とする世界的な宣教団体「Cru(クルー)」(旧キャンパス・クルセード・フォー・クライスト=CCC)のミニストリーの一つである「ジーザス・フィルム・プロジェクト」は3月末、イエス・キリストの生涯を描いた映画「ジーザス」の提供言語が2200言語に達したと発表した。2200番目の言語は、西アフリカのコートジボワールで話されているクランゴ族の方言であるブーナ・クランゴ語。
1979年に製作された映画「ジーザス」は、これまでに世界のほぼ全ての国で上映されており、現地の人々に母国語で福音を伝える機会を提供し、大宣教命令を果たす一助となってきた。2012年には提供言語が817言語に達し、世界で最も翻訳された映画としてギネス世界記録(英語)にも認定され、今もその地位にあり続けている。
ジーザス・フィルム・プロジェクトのエグゼクティブ・ディレクターであるジョシュ・ニューウェル氏は、「映画『ジーザス』ほど時節にかなっており、アクセスしやすいものはありません。間もなく地球の隅々まで行き渡るでしょう」と話す。
「今日、イエスについて聞いたことがない人が何十億人もいるという試算があります。私がここにいるのは、今後10年間で、あらゆる人、あらゆる場所に(福音を伝えに)到達する計画があることをお伝えするためです」
ニューウェル氏と妻のホリーさんは25年前、コートジボワールと国境を接するブルキナファソを初めて訪れ、映画「ジーザス」による福音宣教の初期の影響を目撃した。
「滞在の最終日に、私たちのガイドを務めてくれた地元の聖書翻訳者が町外れまで私たちを案内してくれ、どんな道を通っても行き着けないようなほこりっぽい丘を一緒に登ってくれました。彼女は言いました。『向こうの土地を見てください。私は国境を越えてあの村々に行き、村人たちの言葉を学ぶことはできません。いつかあの村々に神が福音を伝えてくださるよう、一緒に祈ってくれませんか』」
夫婦はガイドと共に祈ったが、その時はまだ「神が何を用意しているのか想像もできなかった」と言う。その「向こうの土地」には現在、約30万人のクランゴ族の人々が住んでいる。
「それこそが、このミッションの目的です」とニューウェル氏は言う。「私たちがあらゆる場所で、あらゆる人にイエスを紹介するのは、彼らが本当にイエスに従うことができるようになり、他の人々にも同じことをするように呼びかけるためです」
ブーナ・クランゴ語版に携わった声優の一人で、地元の政府職員として働く男性は、同胞のためにこの映画を自分たちの言葉に翻訳できたことに胸を躍らせている。
「共通の言語で人とコミュニケーションを取るとき、それは彼らの心に届きます。私が自分の言葉で聞き、話すとき、それは私の心に届いているのです」
ジーザス・フィルム・プロジェクトによると、ブーナ・クランゴ語の話者のうち、キリスト教徒はごく一部で、ほとんどは伝統的な民族宗教を信仰しているという。映画「ジーザス」の視覚的特性は、住民の多くが読み書きができない状況において特に意義がある。
ブーナ・クランゴ語版のプレミア上映は、現地の関係者らによって計画されており、近い将来、追加上映も予定されている。
テクノロジーの進歩は、世界中で映画「ジーザス」の翻訳と録音のペースを加速させている。1000番目の言語に到達するのには32年かかったが、テクノロジーの進歩により、その数字を倍増させるのには、わずか10年しかかからなかった。
翻訳と録音作業は、ジーザス・フィルム・プロジェクトが地元の教会や団体、声優、コーチ、台詞監督、審査委員を務めるボランティアと協力して行っている。
このプロジェクトは1950年代、イエスの生涯を描いた映画を構想したクルーの創設者、ビル・ブライト氏によって始まった。クルーの伝道戦略家であるポール・エシュルマン氏は、ワーナー・ブラザースとの協力でそのビジョンの実現に貢献し、後にこの映画を世界的な伝道に活用するためにジーザス・フィルム・プロジェクトを立ち上げた。
クルーのミニストリーの一つである女性向けオーディオ聖書「ハー・バイブル」の広報担当者であり、2023年に亡くなったエシュルマン氏の娘であるジェニファー・エシュルマン・ハフさんは、ジーザス・フィルム・プロジェクトのブログ記事(英語)で、父親の霊的遺産についてこう振り返っている。
「映画を通して世界に福音を伝えるという使命は、父が深く信じ、その実現に人生をささげたビジョンでした。羊飼いが1匹の迷える羊を捜すために99匹の群れを離れたように(マタイ18:12)、全ての人が自分の心に直接語りかける方法でイエスのことを聞くべきだと父は信じていました」
「映画『ジーザス』の2200番目の翻訳を祝うこの時、使命がまだ終わっていないことは明らかです。父はよく、『私たちは誰かを見逃しているのではないだろうか。どうすればその人たちに伝道できるだろう』と言っていました。父は大宣教命令の緊急性を深く信じ、全ての人が神にとって重要であることを私たちによく思い出させてくれました」
■ 映画「ジーザス」日本語版