国際的なキリスト教迫害監視団体「オープンドアーズ」は15日、世界各国におけるキリスト教徒に対する迫害状況をまとめた報告書「ワールド・ウォッチ・リスト」(WWL)の最新版を発表した。それによると、信仰を理由に迫害されたキリスト教徒は、この1年間に世界で約3億8千万人に上った。
WWLは、キリスト教徒に対する迫害が深刻な50カ国の状況をまとめ、迫害度合いに応じて各国をランク付けしたもの。発表されたのはWWLの2025年版(英語)で、北朝鮮が前年に続きワースト1位になった。北朝鮮は、22年は2位だったものの、それ以外は過去20年以上にわたって世界最悪の迫害国とされ続けている。
北朝鮮では、キリスト教を信仰していることが知られれば、処刑や強制収容される危険性がある。しかし、そうした状況にもかかわらず、国内には30万から50万人のキリスト教徒がいると推定されている。WWLには、次のように書かれている。
「キリスト教徒が礼拝のために集まることはほぼ不可能だ。あえて集会を行う人々が生き延びるためには、最大限の秘密厳守が必要だ。もしも北朝鮮政府に発見された場合、彼らは政治犯収容所への強制収容や重労働、処刑に直面する。また、信仰の分かち合いや宗教文書の国内への持ち込みは、拘束や強制労働につながる可能性がある」
中国は、第15位の迫害国に挙げられた。オープンドアーズは中国について、母国に戻れば拷問や投獄などに直面する運命にある脱北者数百人を北朝鮮に強制送還したとして、国際法上の犯罪である「人道に対する罪」に加担していると非難。また、脱北者がキリスト教に改宗している場合、送還後さらに厳しい扱いを受けるとしている。
中央アジアでは、地域全体に権威主義が広がり、住民は「行き過ぎた国家による監視」の対象となり、キリスト教徒の集会には制限が課されている。
また、中南米のニカラグアやキューバのようにキリスト教徒が多数派を占める国でも、政府に批判的な教会やキリスト教徒は標的にされ、差別を受けている。
その他、WWLによると、礼拝が過激派や自警団によって妨害される国や、北アフリカのアルジェリアのように、教会に通うのに当局への登録を求められる国もある。
昨年はまた、デジタル技術を用いた迫害も急速に増加した。
「新たなテクノロジーにより、権威主義的な政府(特に中国)は、監視や検閲を通じてキリスト教共同体を制限することが可能になった。これは、人工知能(AI)の成長により、さらに激化している。また、他の地域では、過激派が攻撃にドローンを使用したり、キリスト教徒がメッセージアプリで発言する内容を監視したりしている」
「(これらのテクノロジーが)信教の自由に及ぼす影響は、今まさに議論され始めたばかりである」
アフリカのサハラ砂漠以南の15カ国では昨年、キリスト教徒に対する暴力が激化し、「難民危機」をもたらした。オープンドアーズは、政権の不安定化に乗じたイスラム過激派の増加に、その原因があるとしている。15カ国のうち、特にブルキナファソ(20位)、マリ(14位)、チャド(49位)で迫害が強まった。チャドは今回初めて、WWLの迫害国上位50カ国に入った。また、ナイジェリア(7位)では、キリスト教徒が「極度の」迫害に直面しているとし、WWLには次のように書かれている。
「アフリカのサヘル地域(サハラ砂漠南縁部)は強制移住のホットスポットとなっており、その震源地はナイジェリアだ。ナイジェリアにおけるイスラム過激派の暴力は、300万人以上の難民を生み出しており、テロ集団『ボコ・ハラム』は、命からがら逃げ惑うキリスト教徒を追い詰めるためにドローンを使い始めている」
WWL(2025年版)に掲載された迫害国上位50カ国は下記の通り。
1. 北朝鮮 2. ソマリア 3. イエメン 4. リビア 5. スーダン 6. エリトリア 7. ナイジェリア 8. パキスタン 9. イラン 10. アフガニスタン 11. インド 12. サウジアラビア 13. ミャンマー 14. マリ 15. 中国 16. モルディブ 17. イラク 18. シリア 19. アルジェリア 20. ブルキナファソ 21. モロッコ 22. ラオス 23. モーリタニア 24. バングラデシュ 25. ウズベキスタン |
26. キューバ 27. 中央アフリカ 28. ニジェール 29. トルクメニスタン 30. ニカラグア 31. メキシコ 32. オマーン 33. エチオピア 34.チュニジア 35. コンゴ民主共和国 36. ブータン 37. モザンビーク 38. カザフスタン 39. タジキスタン 40. エジプト 41. カタール 42. コモロ 43. カメルーン 44. ベトナム 45. トルコ 46. コロンビア 47. キルギスタン 48. ブルネイ 49. チャド 50. ヨルダン |