1969年。米ミシシッピ州生まれのアーサー・ブレシットさん(69)が、長さ約3.7メートル、重さ約20キロの十字架を担いで約40年にわたる旅を始めた年だ。歩いた距離は実に6万1320キロ。地球1周半に相当する距離を、冷戦時代の旧ソ連やレバノン、北朝鮮、イラクなど、多くの危険地域も通りながら歩き続けた。
その内容をまとめたドキュメンタリー映画「十字架―アーサー・ブレシット物語」(原題:The Cross: The Arthur Blessitt Story)が27日、米国で放映開始された。放映後3日間で、約31万ドル(約3000万円)の興行収益を上げ、同期間中では米国の全映画で18位と人気を見せている。
神からの召しを感じ、当時キリスト教のカフェを経営していたブレシットさんは、店にあった十字架を担いで世界中を巡り歩くことを決心。1969年のクリスマスの朝、カリフォルニア州ロサンゼルスを出発し、約40年にわたる旅を始めた。
「人々は本当に信じることができ、また希望を置ける何かを捜し求めているが、アーサー・ブレシットさんは、世界中のすべての人々の心に触れてくれる」。
同映画の宣伝を担当したキリスト教の広告会社「WDCメディア」のスーザン・ザーン社長はそう語り、「この映画は、公の場で信仰を分かち合うことの問題について、よりオープンな流れを作り出すことができると思う」と評価した。
ブレシットさんは昨年6月まで旅を続け、それまでに巡った国は全部で315カ国。その内戦争や紛争が起こっていた国は52カ国あり、冷戦時代の旧ソ連やイラク、北朝鮮、イラン、アフガニスタン、ソマリア、スーダン、中国、南アフリカ、レバノン、インド、パレスチナ、イスラエル、キューバ、リビア、イエメン、ベトナムなどの国で数多くの危険地域を渡り歩いてきた。また、徒歩旅行としては世界で最も長距離を歩いたとして、ギネス記録にもなっている。
旅の間には、前ローマ教皇の故ヨハネ・パウロ二世やジミー・カーター元米大統領、パレスチナ自治政府の故ヤセル・アラファト議長やリビアのムアンマル・アル・ガダフィ大佐などに会っている。
また、ジョージ・ブッシュ米前大統領もブレシットさんに会っており、当時アルコール依存症などを患っていた前大統領は、その出会いに大きな感銘を受け、その後の改心のきっかけになったとも言われている。