5日に投開票された米大統領選で、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が、民主党候補のカラマ・ハリス副大統領を破り、第47代大統領としての再選を決めた。
トランプ氏は、接戦が予想されていた激戦7州で全勝し、全米50州と首都ワシントンに割り当てられた計538人の選挙人のうち、過半数を大きく上回る312人を獲得。226人のハリス氏に大きな差を付けての勝利となった。獲得した選挙人は、初当選した2016年の大統領選で得た306人を上回った。
この結果を、米国のキリスト教指導者らはどう受け止めたのか。トランプ支持者からハリス支持者まで、9人の反応をまとめた。
1. クリント・プレスリー氏(南部バプテスト連盟議長)
米最大のプロテスタント教団である南部バプテスト連盟(SBC)の議長で、ヒッコリーグローブ・バプテスト教会(ノースカロライナ州)の牧師を務めるクリントン・プレスリー氏は、自身のX(旧ツイッター、英語)に次のように投稿した。
「大統領選の決定的な結果と、フロリダ、ネブラスカ、サウスダコタ各州での中絶反対の立場の勝利に感謝します。次期大統領のトランプ氏と次期副大統領のJ・D・バンス氏、おめでとうございます。私と何百万人もの南部バプテスト連盟の仲間は、あなたのために祈ります。『主こそ王。全地よ、喜び躍れ』(詩編97:1)」
2. アルバート・モーラー氏(南部バプテスト神学校学長)
共にSBC系列である南部バプテスト神学校(ケンタッキー州)とボイス大学(同)の学長で、米キリスト教誌「ワールド」のオピニオン面の編集者を務めるアルバート・モーラー氏は、同誌に掲載した論説(英語)で、トランプ氏の勝利演説を「礼儀正しく、前向き」だったと評価した。
「トランプ氏は米国民に対して『過去のわだかまりを捨て去ろう』と呼びかけ、米国の未来について温かく魅力的なビジョンを提示しました。銃撃者が暗殺を試み、まさに死の寸前まで迫った際、トランプ氏を救ったのは神であったと彼は語りました。トランプ氏は選挙運動中、より邪悪な言葉遣いで、より礼儀を欠いた発言を繰り返していましたが、米国民は彼に2度目の大統領という最もまれな贈り物を与えました。同じことを主張できるのは、グロバー・クリーブランド元大統領だけです。今、全てがトランプ氏の双肩にかかっているのです」
「米国民が取るべき正しい対応は、新しい大統領を迎える準備をし、直面する大きな課題に共に取り組むことです。トランプ氏は、今朝(勝利演説で)述べた言葉の精神を体現することが必要です。彼は歴史を変える機会を得ました。彼は大きな希望と期待、そして大きな課題を背負って選出されました。彼はしばしば、自分自身が自身の最大の敵となり得ることを証明しました。トランプ氏には、自身が考える通りに強く、そしてこの厳しい時代にふさわしい政治家となってもらいたいと思います」
「キリスト教徒としての私たちの任務は、次期大統領と国家のために祈ることです。私たちは、それ以外のことについて何も知らないとしても、そのことを知っています。米国の選挙制度は機能し、明確な勝者を生み出しました」
3. ベン・カーソン氏(元住宅都市開発長官)
2016年の大統領選の共和党予備選でトランプ氏と争い、トランプ政権下では住宅都市開発長官を務めた元脳神経外科医のベン・カーソン氏は、自身のX(英語)に次のように投稿した。
「米国第一。常に米国。親愛なる友人であり、米国の次期大統領となるトランプ氏に祝辞を贈ります。今日私が述べたように、神はまだわが国を見限ってはいません。さあ、仕事を始めようではありませんか」
4. フランクリン・グラハム氏(ビリー・グラハム伝道協会総裁)
ビリー・グラハム伝道協会(BGEA)と福音派の国際援助団体「サマリタンズ・パース」の総裁兼最高責任者(CEO)を務める大衆伝道者のフランクリン・グラハム氏は、自身のX(英語)に次のように投稿した。
「トランプ氏、第47代大統領当選、おめでとうございます。神の導きと知恵を求め、日々神に目を向けることを祈ります」
5. マーク・ドリスコル氏(トリニティー教会牧師)
トリニティー教会(アリゾナ州)の牧師であるマーク・ドリスコル氏は、自身のX(英語)に次のように投稿した。
「神は今夜、われわれの偉大な国に慈悲を示されました。投票率が過去最低を記録する中、投票を棄権した数百万人の米国の福音派の人々へ。神の意志は、あなたがたとは関係なく実現したのです」
6. ドワイト・マキシック氏(コーナーストーン・バプテスト教会牧師)
コーナーストーン・バプテスト教会(テキサス州)の創立者で牧師のドワイト・マキシック氏は、トランプ氏の支持基盤とされた福音派を性差別主義者の集団だと非難し、自身のX(英語)に次のように投稿した。
「もしハリス氏の敗因を一つに絞らなければならないとすれば、ウィリアム・ウルフ氏(トランプ政権下の元高官)がはっきりと述べたように、福音派の米国人の大半、そして米国全体が、女性大統領を望んでいなかったということです」
「黒人大統領を受け入れ、支持するまで、米国は長い時間がかかりました。そして、女性大統領を支持するまでにはさらに長い時間がかかるでしょう。神は今もなお支配しておられます。そしてそこに、私の平安と喜びがあるのです」
マキシック氏は、トランプ氏に反対票を投じた福音派の一人で、投開票日前には米テレビ局「MSNBC」のウェブサイトに、自身は中絶や同性婚に反対する立場だが、ハリス氏に投票するとする論説(英語)を寄稿していた。
7. ポーラ・ホワイト氏(テレビ伝道者)
トランプ氏の霊的助言者として知られるテレビ伝道者のポーラ・ホワイト氏は、トランプ氏の勝利を祝い、2人の長年の関係と、トランプ氏が掲げる「米国を再び偉大に」という使命を強調し、自身のインスタグラム(英語)に次のように投稿した。
「トランプ大統領、おめでとうございます。24年間、この旅路の一部であることをとても感謝しています。米国を再び偉大にするために、あなたと共に、米国民と共に、神の子らと共に立ち上がることを光栄に思います」
8. タルバート・スワン氏(チャーチ・オブ・ゴッド・イン・クライスト監督)
米最古の公民権運動組織の一つである全米黒人地位向上協会(NAACP)のグレーター・スプリングフィールド支部(マサチューセッツ州)支部長で、ペンテコステ派教団「チャーチ・オブ・ゴッド・イン・クライスト」(COGIC)の監督であるタルバート・スワン氏は、長年貫いてきたトランプ氏に批判的な立場を変えず、自身のX(英語)に次のように投稿した。
「トランプ氏の当選は、排斥されていたコミュニティーが苦労して勝ち取ってきた権利を脅かすものです。彼のリーダーシップの下では、偏見と排除に根ざした政策が強化され、黒人、移民、女性、障がい者の地位後退を招く危険性があります」
9. ジョシュ・ハワートン(レイクポイント教会牧師)
レイクポイント教会(テキサス州)の牧師であるジョシュ・ハワートン氏は、トランプ氏の再選を受け、クリスチャンがすべきだと考える以下の4つのことを、自身のX(英語)に投稿した。
1)感謝する。昨夜、わが国は不相応な憐(あわ)れみを受けました。それは悔い改めへの窓です(詳しくは後述)。どのクリスチャンも、(憐れみ深いことに)昨夜敗北した政策綱領を支持すべきではなかったし、そう発言することが物議を醸すようなことがあるべきではありませんでした。実際、牧師がそのようなことを言うと物議を醸すような状況にあった過去20年の間に、米国の教会に何が起こったのかを深く顧みるべきです。
この(神に)反抗的な国が受けてしかるべき報いから免れたことを祝い、感謝することは間違っていません。もしあなたに子どもがいるなら、あなたは祝う姿を見せる必要があります。なぜなら、それが子どもたちの心を育てるからです。「神に逆らう者が滅びれば歓声をあげる」(箴言11:10)
2)祈る。統治する指導者のために祈るように命じられている(1テモテ2:1)からというだけでなく、このような状況だから祈るのです。私たちは、ヨシヤ(民族復興に導いた正しい指導者)ではなく、イエフ(より大きな悪を打ち負かした欠陥のある指導者)を選んだのであり、これはリスクがあることです。
「君侯に依り頼んではならない」(詩編146:3)という命令は、大統領よりも10兆倍偉大な何者かが存在し、選挙よりも100億倍偉大な、私たちが切望し求めるべき何かが存在することを意味しています。その求めるべきものとは、私たちの世代における聖霊の傾注です。
3)部屋の中では大人でいる。政治家は4年で任期を終えますが、友人や家族は一生続くものです。短期的なリーダーのために生涯の関係を失ってはいけません。自分の信念には決して妥協することなく、今日、一致を保つ人(エフェソ4:3)、平和を実現する人(マタイ5:9)となりましょう。
4)私たちの世代における神の目的に献身する。私たちの国に霊的な目覚めがなければ、たとえ神の御心にかなった法案を提出する政治家がいたとしても、長い目で見れば意味がありません。なぜなら、その法案に賛成する十分な数の神の民がいないからです。
もっと重要なことは、ユダヤ・キリスト教的価値観は国家を混乱から守ることはできても、人を地獄から守ることはできないということです。それができるのはイエス・キリストの血だけです。重要なことは、変わらず重要なままなのです。すなわち、全ての国の人々を弟子にすることであり、私たちの世代における神の目的の復活のための改革とリバイバルです。私たちは、今にも何か事が起こり得る状況に置かれているように感じます。背の高い草があちらこちらでガサゴソと音を立て、ユダの獅子(しし)がどこに飛びかかるのかを待っているかのようです。