パキスタンの裁判所は18日、4人の子を持つキリスト教徒の母親である元看護師のシャグフタ・キランさん(40)に対し、イスラム教の預言者ムハンマドを侮辱したとして、冒瀆(ぼうとく)罪で死刑を言い渡した。裁判所はこの他、30万パキスタンルピー(約15万円)の罰金も命じた。
キランさんは2020年9月に通信アプリ「ワッツアップ」のグループ内で冒瀆的な内容を共有した容疑で、21年7月29日に首都イスラマバードでパキスタン連邦捜査局(FIA)に逮捕された。自宅を家宅捜索された際、キランさんの夫と息子2人も拘束されたが、後に釈放された。
キランさんの代理人であるラナ・アブドゥル・ハミード弁護士は、キリスト教メディア「クリスチャン・デイリー・インターナショナル」(CDI、英語)に対し、次のように語った。
「キランさんは、彼女がイスラム教の預言者を侮辱する内容を共有したと主張するシラズ・アフマド・ファルーキという名のイスラム教徒によって告訴されました。しかし、キランさんはその内容を投稿したことはなく、ワッツアップのグループ内にその内容を読まずに転送しただけだと主張しています」
キランさんは、ワッツアップの複数の異宗教間グループに参加し、そこで福音を伝え、自身のキリスト教信仰を分かち合っていた。そのようなグループの一つである「ピュア・ディスカッション」は、告訴人であるファルーキ氏、インド人のムハンマド・アミール・ファイサル氏、カナダ人のムハンマド・ジャリール氏によって管理されていた。
ハミード氏は、キランさんは裁判の間も毅然としており、勇敢な女性だったと語った。
「判決が下された後、キランさんに会いましたが、彼女は(次の)高等裁判所で前向きな結果が出ることに非常に期待していました。しかし、彼女は家族が恋しくて仕方がなく、できるだけ早く家族と再会したいと願っています」
ハミード氏は、裁判所が詳細な判決を言い渡した後に控訴する方針だと述べた。ハミード氏によると、キランさんのようにパキスタンの冒瀆法295条C項で起訴された場合、99パーセントがイスラム主義者の圧力により有罪判決を受けるため、今回の判決は驚くようなものではないという。
「冒瀆法295条C項の全ての事例を検証すれば、たとえ告訴人側の主張が非常に薄弱であっても、裁判所が有罪判決を下す傾向にあることが分かるでしょう。これは宗教団体の圧力と、暴徒による暴力への懸念によるものです。295条C項の全ての事例を分析すれば、下級裁判所による有罪判決が全て上級裁判所によって覆されていることも分かるでしょう」
英シンクタンク「社会正義センター」(CSJ)によると、パキスタンでは1987年以降、約3千人が冒瀆罪で起訴されている。しかし、冒瀆罪の濫用による実際の規模は、この3~4倍に上る可能性があるという。
CSJによると、昨年は数百人が冒瀆罪で起訴され、パンジャブ州だけで552人が同罪により勾留された。このうち少なくとも350人が今年6月時点でも依然として勾留されており、今年1月から6月にかけて新たに103人が同罪で起訴されている。
また、パキスタンでは今年1月以降、冒瀆罪で起訴された人のうち、少なくとも7人が個人や暴徒により殺害されている。こうした犠牲者は、1994年から2023年の間に計94人に上るという。
国際迫害監視団体「オープンドアーズ」は、キリスト教徒に対する迫害がひどい国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」(2024年版、英語)で、パキスタンを前年同様、世界で7番目に迫害がひどい国としている。