最高裁が違憲とし、国の賠償責任を認めた旧優生保護法を巡り、日本キリスト教協議会(NCC)は、6日に発表した今年の「平和のメッセージ」で、「(同法下の)強制不妊という人権侵害に加担」していたとして謝罪した。
旧優生保護法は戦後の1948年に成立し、96年に現在の母体保護法に改正されるまで存在した。「不良な子孫の出生防止」を目的に、特定の障がいや疾患を有する者に対して、強制的に不妊手術ができると規定。48年間に約2万5千人が不妊手術を受けたとされる。
メッセージによると、NCCは1950年、米国から宣教師を迎え、10カ月にわたって「近代的で民主的な家庭」を作るための講習会を全国で開催。講習会では、感染症や遺伝性の病気を持っていないことが結婚相手の条件の一つとして挙げられ、結婚前の「身体検査」の必要性が説かれた。NCCはこの宣教師の活動を全面的に受け入れ、特別に感謝状を授与していたという。また64年には、受胎調整が許されるケースの一つとして、「健康な子どもが生まれ得ないと予想したとき」を挙げる声明を総会で可決することもしていた。
メッセージは、こうしたNCCの過去の活動や、旧優生保護法下で行われた不妊手術の実態、同法を違憲とした最高裁判決などを概説。また、同法が戦前の1940年に制定された旧国民優生法を前身とすることにも触れ、両者は「国家のため」という点で共通しており「地続き」だと指摘。NCCが問題を認識できなかったのは、「『国家のため』という戦前からの思考形態と決別できなかったからにほかなりません」とした。
その上で、「NCCの過去の活動や声明が障がい者や病者を差別するものであったこと、それによって優生保護法下の強制不妊という人権侵害に加担してしまったこと、そして、長い間そのことに気づかず、放置してきてしまったことを心から反省し、謝罪します」と表明。誰もが神に祝福された大切な存在であり、いのちに優劣はないことを確認するとともに、「私たちの戦前に決別したい」とした。
平和のメッセージは、終戦記念日のある8月に合わせ、NCCが毎年発表している。今年は「悔い改めから始めたいと思います」と冒頭で述べ、全体の4分の3近くを旧優生保護法に関連する内容に割いた。
メッセージはこの他、3年前のクーデター後から国軍が実権を握り続けているミャンマーや、イスラエルと戦争状態にあるパレスチナ自治区ガザ地区、ロシア・ウクライナ戦争にも言及。国内では、自衛隊の配備強化が進められている南西諸島や、劣悪な条件下で働かされている外国人労働者の問題などに触れた。
その上で、「悪から離れ、善を行え。平和を求め、これを追え」(詩編34編15節)を引用。「いのちを踏みにじる悪ではなく、いのちを活(い)かす善を行う者でありたいと切に願います」とし、自己吟味を重ねつつ、神の助けを信じ、諦めないで平和を追い求め続けるよう呼びかけた。