3世紀から4世紀のものとされる「クロスビー・スコイエン写本」が11日、英ロンドンの競売大手、クリスティーズで競売にかけられ、306万5千ポンド(約6億1500万円)で落札された。クロスビー・スコイエン写本は、個人所有としては現存するキリスト教最古の書物で、世界最古の書物の一つとされる。
クロスビー・スコイエン写本は、1952年にエジプトの農業従事者によって発見された「ボドマー・パピルス」を構成する写本の一つ。この写本群は、スイスの収集家マーティン・ボドマー氏が最初に購入したことからこう名付けられた。発見地であるエジプトの集落ディシュナにちなみ「ディシュナ文書」とも呼ばれ、キリスト教の著作や聖書の一部、異教の文献などを含む。このうち、クロスビー・スコイエン写本は何度か人手に渡った後、ノルウェーの実業家で収集家のマーティン・スコイエン氏が1980年代に入手し、所蔵していた。
古代エジプトの修道院で修道士たちによってパピルスに記されたこの写本は、この地域の乾燥した気候により、驚くほど良好な状態で発見された。104ページ(52枚)からなり、現在はプレキシガラスに挟んで保護されており、初期のキリスト教信仰を知るための希少な文献となっている。
コプト語で書かれており、「ヨナ書」と「ペトロの手紙一」の完全版、復活祭の説教など、これまで発見された中で最古の文書が含まれている。専門家は、この写本は紀元250年から350年の間に、最初期のキリスト教修道院で典礼のために書かれたと考えている。
「上エジプトの最も古いキリスト教修道院の修道士たちは、キリスト(が生きた時代)からわずか数百年後、すなわち、最後の福音書が書かれてからわずか百数十年後に、この写本を使って最も古い復活祭を祝っていました」と、クリスティーズの書物・写本担当上級スペシャリスト、エウジェニオ・ドナドーニ氏は英BBC(英語)に語った。
ドナドーニ氏によると、写本には「キリスト教が地中海周辺に広まった最初期の証しとしての記念碑的な重要性」があるという。クリスティーズは、1950年代に10代で書物のコレクションを始めたスコイエン氏について、「偉大な書物愛好家の一人として記憶される」としている。
競売にはクロスビー・スコイエン写本のほか、スコイエン氏のコレクションから、古代の法律文書や装飾された宗教写本、歴史的な年代記など、約60点が出品され、落札額は合わせると750万ポンド(約15億円)を超えた。