米政府の諮問機関である米国際宗教自由委員会(USCIRF)は1日、2024年の年次報告書(英語)を発表した。報告書は、ナイジェリアやインドなどの複数の国について、信教の自由の侵害が著しいとして、米国務省に対しより強固な姿勢を取るよう要請。また、アゼルバイジャンを信教の自由に関して「特に懸念のある国」(CPC)に指定するよう初めて勧告した。
USCIRFがCPCに指定するよう勧告したのは、米国務省が今年1月に指定したミャンマー、中国、キューバ、エリトリア、イラン、ニカラグア、北朝鮮、パキスタン、ロシア、サウジアラビア、タジキスタン、トルクメニスタンの12カ国に加え、アフガニスタン、アゼルバイジャン、インド、ナイジェリア、ベトナムの5カ国を含めた計17カ国。
このうち、南コーカサス地方の旧ソ連構成国であるアゼルバイジャンは、CPCへの指定が初めて勧告された。アゼルバイジャンは昨年9月に軍事行動を起こし、隣国アルメニアとの長年にわたる係争地であるナゴルノカラバフを掌握。ナゴルノカラバフにはキリスト教徒のアルメニア系住民が多く住んでいたが、この軍事行動を受け域外へ大量脱出することを余儀なくされた。
USCIRFは2020年以降、アゼルバイジャンを一段階低い「特別監視リスト」(SWL)に指定するよう勧告。米国務省は今年1月、勧告を受けSWLに指定していた。しかし、昨年9月の軍事行動以降、信教の自由を巡る状況が「悪化傾向」にあるとし、USCIRFは今回、一段階高いCPCへの指定勧告に引き上げた。
一方、SWLには今回、アルジェリア、エジプト、インドネシア、イラク、カザフスタン、キルギスタン、マレーシア、スリランカ、シリア、トルコ、ウズベキスタンの11カ国を指定するよう勧告した。このうちアルジェリアは、米国務省が昨年以前からSWLに指定している。
また、カザフスタンは今回初めて、SWLへの指定を勧告された。シリアは昨年、CPCへの指定が勧告されていたが、近年はシリア政府による圧力が、より政治的、行政的様相を呈してきているとして、SWLヘの指定勧告に引き下げられた。
この他、信教の自由に関して「特に懸念のある組織」(EPC)には、ソマリアのイスラム過激派組織「アルシャバブ」、ナイジェリアのイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」、シリアの反政府武装組織「タハリール・アルシャーム機構」(HTS)、イエメンのイスラム教シーア派武装組織「フーシ派」、イスラム国(IS)の分派組織である「イスラム国サヘル州」(ISSP)と「イスラム国西アフリカ州」(ISWAP)、アルカイダ系の「イスラムとムスリムの支援団」(JNIM)の計7組織を指定するよう勧告した。