カトリックが優勢な国として知られるフランスだが、近年は他の西欧諸国と同様、「脱キリスト教化」が進んでいるとされる。しかしその一方で、同国のカトリック教会では洗礼(入信)志願者がこの10年増加傾向にあり、今年の復活祭(イースター)には1万2千人を超える記録的な受洗者が与えられた。
米国のイエズス会が発行する週刊誌「アメリカ」(英語)が、フランス・カトリック司教協議会の報告書(フランス語)を基に報じたところによると、フランスのカトリック教会では今年の復活祭に、成人7千人以上、11~17歳の若者5千人以上の計1万2千人以上が洗礼を受けた。これは、昨年に比べ31%も多いという。
特に11~17歳の受洗者は、昨年に比べ50%も増加した。また、成人受洗者に占める若年層の割合も増えている。成人受洗者のうち18~25歳が占める割合は、昨年は23%だったのに対し、今年は36%と10ポイント以上増加した。そのため、求道者向けの講座を行う信仰養成担当者のチームを新たに結成しなければならないほどだったという。
フランス・カトリック司教協議会の全国青年伝道召命委員長を務めるビンセント・ブレイナート神父は、同国では現在、若者の80%が宗教教育を受けていないとし、「若者は教会に対する先入観をほとんど持っていません」と指摘。「洗礼を志願する人に共通しているのは、霊的な体験とキリストとの個人的な出会いがあったということです」と述べている。
洗礼志願者の増加は、フランス国内のほぼ全ての教区で見られ、特に都市圏で顕著だという。ただし、記録的な受洗者が与えられていても、減少する幼児洗礼数を補うほどではないという。
成人の洗礼志願者は、キリスト教の伝統を持つ家庭の出身者が依然として多い。しかし、その数は年々減少しており、逆に無宗教の家庭の出身者が洗礼を志願するケースが増えている。今年は、成人の洗礼志願者の4分の1が、無宗教の家庭の出身者だった。また、イスラム教の伝統を持つ家庭の出身者が洗礼を受けるケースもあり、今年は5%だった。
日本の文化庁宗務課が2022年3月に公表した「海外の宗教事情に関する調査報告書」によると、フランスでは、信仰に関する状況を公的に調査することが禁止されているため、正確な宗教統計はない。しかし、民間による調査は複数行われており、2020年に18歳以上の成人2千人を対象にして行われた調査によると、「宗教を信じている」と回答した人は35%で、「宗教を信じていない」と回答した人は29%だった。また、信仰の内容を尋ねる質問では、カトリックが47%、イスラム教が3%、プロテスタントが3%、仏教が2%、正教が1%、ユダヤ教が1%で、いずれでもないが34%だった。