タジキスタンのドゥシャンベに住むラズールは、ドイツで果物を収穫する仕事のオファーを受けた。彼は1年前に大学を卒業したが仕事はなく、収入のない失業生活にうんざりして、事あるごとに不平を漏らしていた。ドイツでの仕事の誘いは、彼にとってはお金を稼ぐ絶好のチャンスだった。
しかしラズールは、海外で働くタジク人が甘言に誘われ、結局だまされ、ほとんど賃金をもらえずに働いているという話も聞いたことがある。そこで彼はモスクに行き、助言を求めることにした。モスクで出会う男たちの多くが、海外で働いた経験があることを知っていたからだ。
タジキスタンは中央アジアで最も貧しい国の一つである。多くのタジク人が国内の高い失業率のために、ロシアや、最近では西欧の一部で仕事を求めて移民労働者として働いている。彼らの多くは建設や農業などの肉体労働産業で働いている。外国での出稼ぎ労働は、母国の家族を養うために十分な収入をもたらすが、一方で、母国で自分が学んだ技術や教育を十分に生かせる職業に就けないジレンマもある。また、移民労働者が悪徳人材あっせん業者や悪質な雇用主の餌食となり搾取されることも多い。中には、低賃金で長時間働かされる者もいるが、本国に強制送還されることを恐れて、口をつぐまざるを得ないケースもある。
タジキスタンは98%がイスラム教徒で、少数派のロシア正教とプロテスタントがある。タジキスタン政府は世俗的だが、国内の宗教活動は厳しく統制されている。信教の自由は保証されているが、教会の活動は政府に監視されているのである。
このラマダンの時、世界中でイスラム教徒のための祈りがささげられている。この時、タジク人イスラム教徒のために祈ろう。海外にいる出稼ぎ労働者のタジク人イスラム教徒が、行った先でクリスチャンに出会い、彼らを通して福音を聞くことができるように祈ろう。そして、このような人々が福音によって変えられ、出稼ぎ労働で得た賃金だけではなく、福音をも持ち帰り、福音の使節として母国に凱旋できるように祈っていただきたい。
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